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次期社長は息子には継がせない

 日本マクドナルドは、良くも悪くも藤田さんのワンマン会社という見方が強い。後継者についてはどう考えていますか。

 僕も73歳だから、次の社長人事について考えることもある。ただ、当社がワンマンで、全部を僕が決めているというのは事実と違う。例えば、広告・宣伝、購買、人事、経理など、各本部に本部長がいて、かなりの権限を持ち、いろいろなことをそれぞれの判断で決めている。

 社外の人は藤田が全部仕切っているという印象を持っているのかもしれないけれど、そんなことはありません。20~30年マクドナルドで勤めてきた社員には優秀な人材もいますから、その中から次期社長を選びたい。

 藤田さんはオーナー経営者だから、一族が後継者になるのがすわりがいいということはありませんか。

 いや、うちの息子にそんなことはできっこありませんな。これだけの企業になると無理です。何もしないで社長のイスにすわっているだけならまだしも、会社を発展させ続けるなんてとてもとても。

 僕には2人の息子(元氏と完氏)がいるけれども、「マクドナルドを継ぐなんて、とんでもないことを考えるな。もしやっても、3日で追い出されるのがオチだぞ」と言っているんです。

 今の若い人は、生まれたときから苦労をほとんど経験していない。小さくても住める家があって、食べることにも困らない。服もある。我々のように戦後の焼け野原から無一文で立ち上がった人間とは違うんです。

 息子が後を継いでうまくいけばいいが、失敗したらそれこそ地獄で、耐えられませんよ。それよりも、優秀なベテラン社員がいるから、彼らに任せた方が会社のためにはいい。

 ただ、その場合にもポイントがあって、マーケティング力のある人材を社長に選ばなければなりません。マーケティング力というのは天性のもので、理性や努力では身に付けられない。生まれつき足が速い、遅いというのと同じです。

 同じ商品を売っているのに、売れる店と売れない店があるでしょう。あれは、データによる販売分析によるところが大きいけれども、生まれつきの感性に負うところもあるんです。それが備わっている人材を見つけ出し、教育しなければなりません。

 まあ、そうは言っても2002年の公開までは、私が社長でいなければならないでしょうな。少しでも高い株価を付けるにはそうする必要があるようだから(笑)。

 確かに。もし藤田さんが経営からはずれたら、資本の論理で米マクドナルドが経営に口出しするようになるのではありませんか。

 それは、正直分からないです。でも、ないと思いますけどね。

 2000年末で満期を迎える米マクドナルドとのライセンス契約を更新されましたが、支払うロイヤルティーが現在の1%から2.5%に上昇しましたね。

 率は上がりましたが、諸外国に比べれば、比較にならないほど低いロイヤルティーなんです。世界中に浸透している「マクドナルド」の看板を使用することを考えれば、納得しなければならない数字でしょう。

 実は、米マクドナルドは5~6%を提案してきました。それではこちらは受けられないので、7年間も粘って交渉を続けてきた。米国側は、一時3.5%まで譲歩したけれども、「だめだ。それでは、もうやらない」と頑張った。最終的に、初めの10年間は2.5%、11年目から3%というところまで下げさせました。

新業態マックカフェを実験的に出店

 ところで、従来のハンバーガー店が好調な中、コーヒーやケーキなどを提供する「マックカフェ」という新業態やセルフサービス型の店舗などを実験的に出店していますね。

 これは、今後の30年間に飛躍するための試みです。1000年続いている味噌やしょうゆに比べればまだまだだが、ハンバーガーは日本人の食生活に確かに定着した。今後もハンバーガーを改良した商品を低価格で提供することで当分の間は勝負できる。

 ただ、将来を考えれば、そればかりに頼っているわけにもいかない。しばらくは景気が低迷するから、売り上げを伸ばすことばかり考えてもいられません。

 では、どこで利益を出すか。考えられるのが約10万人のクルーの人件費です。現在、売上高人件費比率は16%だけれども、これを5%下げたい。そのために、日比谷シティ(東京・千代田区)にセルフサービス型の店を作って実験しているわけです。レーンに沿って並んだ商品を顧客が自由に取って、最後に会計場で精算するタイプの店です。成功したら全店に広げたい。そうすれば利益は伸ばせます。

 一方、「マックカフェ」は、ハンバーガー以外の商品を売る。「スターバックス」や「ドトールコーヒーショップ」が大々的に展開をしているし、事業としては有望だと思います。

 問題は利益です。日本マクドナルドの社員の給料は高水準ですから、今のままでは利益を出すことは難しい。何とか工夫して、ハンバーガーに続くマクドナルドの事業の柱に育て上げたい。そのために、従来のコーヒーショップの発想から離れて店を作れと担当者にいつもはっぱをかけています。

 話は変わりますが、藤田社長は、今年の夏に米ドルの暴落があると見ているそうですね。

 そうです。3月16日にニューヨーク株式市場でダウ工業株平均が1万ドルを付けましたが、僕はこの7~8月に株価は急落すると見ている。だって経済の実態とまったく一致していないじゃないですか。この3年間、株価は3倍にもなったが、GDP(国内総生産)の伸びは、それにはまったく及ばない。これはどう考えてもおかしい。

 株価は凧上げと同じで、上がっていけば必ず落ちる。皆が「次は1万1000ドルだ」と口を揃えているときこそ、下落する前なんです。株価が暴落すれば、ドル相場も急落するでしょう。「米国経済はまだ当分強い」という人もいますが、それは間違っていると思う。

 外貨ではユーロが強くなる可能性がある。ユーロの参加11カ国が持つ保有金塊は9800トンと、米国の8000トンよりも多い。今後は、いざというときに金という“裏付け”が高いユーロを、ドルに代わって持つ人が増えると思われるからです。