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史上最長といわれたゴールデンウイーク10連休に、マクドナルドのハンバーガーを食べた、という方は多いのではないでしょうか。

日本マクドナルドが設立されたのは1971年のこと。今ではカナダ出身の女性社長であるサラ・カサノバ氏が経営に当たっていますが、原点は藤田田氏です。

その藤田氏が語った経営に対する考え方と当時の日本経済に対する見方をお届けします。

掲載号 1999年4月5日号:記事中の内容は掲載当時のものです。

藤田 田(ふじた・でん)氏
1926年3月 大阪市生まれ、73歳。
51年3月 東京大学法学部卒業
56年 在学中に設立した高級雑貨輸入の藤田商店を株式会社に改組し社長に
71年5月 日本マクドナルドを設立し社長に就任
89年9月 米国トイザラスと藤田商店の合弁で日本トイザらスを設立し副会長に就任
流通・サービス業における日本への外資参入の成功請負人として、外国人経営者が日参する。為替予想をしばしば的中させることでも注目されている。(写真:共同通信)

全社員対象にストックオプション導入
米経済強くない、夏に株・ドル暴落も

5期連続増収増益という好調を背景に、2002年に株式公開に踏み切る。
次の30年を「第2の創業」と位置づけストックオプション制度を導入、21世紀初めに外食市場の5%に相当する売上高1兆4000億円を目指す。
米国の株価は、ドル相場と共に今年夏には暴落すると予想し、日本経済の先行きも厳しいと語る。

(聞き手は本誌編集長、小林 収)

株式公開で社員を活性化する

 2002年に、これまで否定し続けてきた株式公開を計画しています。なぜ今、公開を決断したのですか。

 「1つの商売のサイクルは30年」というのが僕の持論です。特に、1971年に米国のマクドナルドと30年契約を結んだときには、30年かければかなりの数の顧客を獲得できると思っていた。

 幼いころからハンバーガーを食べて育った人はパンや肉、マスタードやケチャップの味に親しんで必ずヘビーユーザー(頻繁に利用する客)になる。その世代が、自分の子供を連れて来店するようになるまで30年が必要だったからです。

 結果は予想通り。数年前までは、1週間から10日に1回利用する人をヘビーユーザーと呼んでいましたが、最近では毎日利用する人がたくさんいます。30年かけてここまできた。次の2001年からの30年契約で、日本マクドナルドをさらに飛躍させなければならない。それには、もはや個人の力では及ばんと思ったわけです。

 1998年12月期の業績は、65円バーガーなどの低価格商品が軒並みヒットして、売上高が3779億円、経常利益は260億円と過去最高でした。しかも5年連続の増収増益です。今の日本マクドナルドには、株式公開による資金調達や知名度の向上は、特に必要ないですよね。

 そう、資金は十分に足りています。ただ、以前から僕は28兆円といわれる外食産業の市場規模のうち、シェア5%に当たる1兆4000億円を取りたいと言ってきた。少なくとも売上高1兆円は獲得したい。

 そのステップとして、売上高を99年に4200億円、2000年には4600億円、2001年には5000億円にするつもりです。今、全国を844ブロックに分け、各ブロックで市場の5%以上のシェアを押さえようとしている。実際に達成したブロックも出始めています。

 そして2010年には売上高1兆円を達成する。そんな大規模な会社を個人でやるのはおかしいし、そもそもクルー(パート・アルバイトの呼称)を含めれば10万人を超す会社を1人の力で束ねるのは無理でしょう。

 これからは、さらにたくさんの優秀な人材が必要になるし、彼らのやる気を引き出さなければ飛躍は望めない。そこで、株式を公開して全社員に分けて、励みにしてもらいたいと思ったわけです。持ち株比率は、米マクドナルドが50%、私が40%、残りの10%が社員と一般株主ということになる。社員には、今年6月から株を渡し始めます。

 これまでも、独立を希望する社員のためにフランチャイズ制度などを設けてきました。社員以外にはチェーン参加を原則的に認めないため、独立した社員はやりがいを持って仕事をしてくれますし、売り上げも好調です。今回の株式公開はそうした社員に対する支援の1つでもあります。ストックオプション制度も導入するつもりです。約6000人の全社員が対象です。「全員で会社を伸ばしていくんだ」と思ってくれればいいんですけどね。

 今回の株式公開で、米マクドナルドとの関係に何か変化はありますか。

 まったくありませんな。うちと米マクドナルドとの関係は「マクドナルド」という名前を借りているということだけです。もともと1971年に契約を結んだときに、「アドバイスは聞くが、命令はするな」ということを条件にしていますし、実際にそうやってきました。日本のマクドナルドは世界でも圧倒的に好業績を収めていますから、向こうも文句は言わんでしょう。