合理性を追求した経営で知られる日本電産の永守重信氏。17年前、ニューヨーク上場後に本誌に新たな時代への決意を語っています。

掲載:2002年2月18日号(記事の内容は掲載当時のものです)

<span class="fontBold">永守 重信(ながもり・しげのぶ)氏</span><br />1944年8月、京都府生まれ、57歳。67年3月、職業訓練大学校電気科卒業。73年7月、28歳で日本電産を設立し、社長に就任。88年11月に大阪証券取引所第2部と京都証券取引所、98年9月に東証1部上場、2001年9月にニューヨーク証券取引所に株式上場。 2001年度の中間期の連結売上高は約1350億円、経常利益は約50億円。家族手当などを廃止し、成績のいい社員は20代後半の若さでも課長に昇進させるなど、職能給制を徹底する(写真:共同通信)
永守 重信(ながもり・しげのぶ)氏
1944年8月、京都府生まれ、57歳。67年3月、職業訓練大学校電気科卒業。73年7月、28歳で日本電産を設立し、社長に就任。88年11月に大阪証券取引所第2部と京都証券取引所、98年9月に東証1部上場、2001年9月にニューヨーク証券取引所に株式上場。 2001年度の中間期の連結売上高は約1350億円、経常利益は約50億円。家族手当などを廃止し、成績のいい社員は20代後半の若さでも課長に昇進させるなど、職能給制を徹底する(写真:共同通信)

HDD(ハードディスクドライブ)用モーターで世界一に躍進。2001年9月、米国同時多発テロの直後にニューヨーク上場を果たした。グローバル経営を浪花節の節回しで語る。

(聞き手は本誌編集長、野村 裕知)

 2002年3月期は戦後、日本の産業を支えてきた金融・会計システムが大きく変わります。この決算期をどうとらえていますか。

 やっと日本でも本当の自由競争が始まりましたね。社員研修でも言ったんです。2002年は日本電産にとって最もいい経済環境が来てるんやないか。せめて20年前にこんな時代が来ていたら、とっくに1兆円企業になっていたと。

 設立して28年ですが、創業後15年は苦難の毎日でした。安くていいもんを作っても売れない。モーターは系列取引、接待取引が85%を占めていました。大企業に「お宅のモーターよりも性能は20%良くて、20%安い」と言うても絶対注文を取れなかったんですから。最近は大歓迎です。どんどん来てくれ、と。

 モーター業界の株価はマブチモーターが1万円前後で日本電産が7000円前後。その他は数百円。2極化が進んでいますね。

 努力の差が出てきましたね。なぜ日本にベンチャーが育たないか。努力したって結果が出ないからです。働いても働かなくても同じ賃金をもらえた。仮に差をつけても、その差が非常に小さい。100努力しても10とか30の結果しか出なかった。

 アメリカに売り込みに行くと、誰も「あなたの年はいくつや」「資本金は」なんて聞きませんよ。「どういう商品でどんなプラスを与えてくれるんや」とそれだけしか聞かない。日本ではまず「経歴書」で「どんな製品や」は二の次なんですよ。従業員が10人なんて言ったら「もう帰れ」です。

次ページ 日本の会計基準はなってない