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野茂選手の活躍を見て、大リーグに対する感覚が変わった──。引退を発表したイチロー選手は、オリックス時代に5つのタイトルを獲得した年、日経ビジネスの編集長インタビューに登場していました。日米野球界での大活躍を予感させる22歳、若きイチロー選手の言葉です。

掲載:1995年10月30日号(記事の内容は掲載時のものです)

イチロー(本名・鈴木一朗)
1973年10月22日愛知県生まれ。22歳。愛工大名電高時代、投手として2年夏と3年春の2回、甲子園に出場、いずれも1回戦で敗退。92年、ドラフト4位でオリックスに入団。2軍のウエスタンリーグ首位打者。94年、69試合連続出塁、210安打の日本記録を達成。打率3割8分5厘はパ・リーグ新。95年、2年連続の首位打者(3割4分2厘)、打点80、最多安打179本、盗塁49、最高出塁率4割3分2厘の5タイトルを獲得。
(写真=AFP/アフロ)
編集長インタビュー
イチロー「プロ野球オリックス外野手]
僕は天才じゃなく運が良かった
自分流を変えず楽しくやるだけ

長嶋、王、落合を超える天才バッターはまだ22歳。阪神大震災の今年、神戸を本拠とするチームを優勝に導いた。決して饒舌ではないが、考えながら話す内容は自然かつ個性的。その独特の振り子打法でプロ野球のイメージを変えつつある。

(聞き手は本誌編集長、永野健二)

しっかりした目標が好調の秘訣

問 210本のヒットを打った昨年に続き、今シーズンも好調で2年連続の首位打者に打点、盗塁のタイトルを獲得しました。単に野球界のヒーローとしてだけでなく、その型破りのプレーぶりには社会現象としてのイチローブームが広がっています。好調の秘訣は何ですか。

答 しっかりした目標を自分の中に立てて、忠実にこなそうとして、できたことです。

問 目標というのは数字ですか。

答 数字とは違います。具体的なことは言えませんが。

問 数字の目標はないが、何か目指すものがあって、なんとなく2年続いて好調だったのですか。

答 なんとなくではないです。少なくとも、去年と今年については。

問 イチローさんの打法は従来の常識と違う部分があるように思います。球団に入ってコーチと意見が食い違っても自分のやり方を通してきたわけですが、野球を始めた小学校時代から通してきた自分のスタイルに自信があったのですか。

問 これまで積み上げてきたものは、中学、高校などの人生の節目で他人との出会いがあり、その中で誰かに言われて自分のスタイルを変えてきたこともあったのではないですか。

答 バッティングに関して言われたことはないです。オリックスに入るまでは他人の助言が必要ないとは思っていなかったのですが、自分の体がそう言っているというか、他人とは違ったものだと体が思っていた。