iモードのゲームは単なる暇つぶし

 その結果が今日の惨状ですか。でも、ソニーはブロードバンド(広帯域)時代の到来という認識がまずあって、家庭に情報を配信する道具としてプレステ2があると言います。考え方としては、まとまっている気がするんですが。

 ブロードバンドは、21世紀において重要な意味を持つでしょう。ですがブロードバンドというのはハード屋が描いた構想なんです。本来、巨大なハードメーカーが狙う分野なんですよ。特に通信に関わる企業がね。日本だったら日本電信電話(NTT)とか海外だったらモトローラとかノキアとか。だから、ソニーがああするこうすると言うのは少しも不思議じゃない。

 ただし、任天堂も含めて弱小のコンテンツ屋が、ブロードバンド、ブロードバンドと騒ぐのは違うと思います。私たちコンテンツ屋は、ハードメーカー主導の考え方に対して、それに乗っていいのかどうか。参加すると言うのは自由ですけれども、それであなた方プラスになるんですか、あなた方の企業は大きくなれるんですか、あなた方にどれだけのメリットがあるんですかと。まあ、ないですね。結局。

 ちっぽけなコンテンツ屋がブロードバンドで稼ぐとか言うのはナンセンスですよ。せいぜい巨大な通信事業者のおこぼれをどれだけもらえるかという議論でしかない。コンテンツ屋というのは、昔で言うたら足軽みたいなもの。ちっぽけな存在なんです。

 任天堂の現在の稼ぎ頭は携帯ゲーム。3月21日には最新鋭機の「ゲームボーイアドバンス」も発売しました。しかし、一方で年内には、高機能の次世代携帯電話も登場してきます。ライバルとして意識はされませんか。

 みなさん、次世代携帯電話は携帯ゲーム機のライバルになるとおっしゃる。これも私だけが言っているんだけど、何でですかと(笑)。なるはずがないと思うんです、私。

 ゲームを遊ぶためには、表示スペースがいるんです。これははっきり言うと大きい方がいい。ただ、スペースを大きくすれば携帯でなくなるから、妥協しなきゃいけない。任天堂は長い間かかって携帯ゲーム機の限界をいろいろ検討してきました。その結果が、先日発売したゲームボーイアドバンスです。これくらいの表示面積、これくらいのCPU(中央演算処理装置)レベルが、携帯ゲーム機としては限界に近いんじゃないか。

 考えてみてください。NTTドコモのiモードのゲームって、あれ、お金を払って遊ぶゲームじゃありません。そりゃ毎月300円払ってる人はいますよ。でも、いろいろ豊富なメニューがある中で、まあ暇つぶしで払ってやっているようなものです。こんな表示スペースで何を遊ぶんですか。遊べやしない。本当のゲームなんかできません、そんなもの。次世代携帯電話の機能をゲームに使うという発想は、ゲームを知らない人の発想なんです。

 では、任天堂の携帯ゲームだからこそ可能になる新しい楽しさと面白さとは、どのようなものですか。

 任天堂はゲーム屋であり娯楽屋です。ですから、ゲーム機として開発されたものも、中期的には娯楽として使う余地はあるわけです。

 例えば、3月末の東京ゲームショウで、新しいゲームボーイアドバンス向けソフトをお披露目しました。中身は音楽。つまり、携帯ゲーム機を楽器にするのです。ソフトを買うとスピーカーがバンドル(同梱)されていて、ギターの音も、ピアノの音も、バイオリンの音も出て、ドラムにもなります。合奏もできるし、楽器を弾けない人でも弾ける。テキストが画面に出て、それに従って操作したら、下手、上手は別ですけれど曲目が流れるんです。

 そういう提案をしてみたんです。何だこんなものという人が多数だったら、発売してもダメかもしれません。しかし、面白いなという人が多ければ、おそらく今年の夏過ぎに、6700~6800円くらいで発売すると思います。

 任天堂は、こういう今までになかった新しい娯楽、つまり新しい楽しさと面白さをユーザーに提案していく会社なんです。うまくいくか、いかないかは別にして、新しい市場を創造していく。これが任天堂の路線なんです。

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