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血尿を出すほど創意工夫せよ

 日清は73年3月期以降、単独決算で31期も連続増収を続けている。国内シェアも41.7%と2位以下のメーカーを大きく突き放す。その原動力は、ユニークな商品を生み出す開発力だ。

 同社が採用するブランドマネージャー(BM)制には、1人でチキンラーメンの開発に取り組んだ百福氏の開発魂を継承する意図が込められている。BM同士の情報交換はほとんどなく、各BMは1人で悩んでアイデアをひねり出すしかない。「考えて考え抜け。私は考え抜くと血尿が出た」という百福氏の境地に近づけというメッセージを込めて、宏基社長が創設した制度だ。

安藤氏:「日清は独創的な創造開発に挑む会社である」。私のこんな創業精神が受け継がれているから、日清はここまで成長したのでしょう。そうでなければ、会社はがたがたしているはずです。

 今でもブランドマネージャーたちが「今こんな商品を作っています」と報告に来ます。私は目があまり良くないし、つらい時もあるけれども、やっぱりマネージャーがやっていることは聞いてやらないと。聞いてやると納得するんですよ。私からは「これはいいよ、これは大丈夫だ」と言ってあげる。

 マネージャーたちには「味はバランスだよ」と常に言っています。いろいろなものを入れても、味が偏らないようにする。ごてごてすると飽きられやすくなる。この加減が難しいんです。

 食品業界でも屈指の優良企業に育った同社だが、百福氏にはそれにつれて社員が贅沢になったと映る。特に生産や研究開発のコストには細かく口を出す。最近も、研究所で麺を冷風乾燥させる設備を買ってほしいという社員に対し、「冷蔵庫の中に扇風機を入れて、ドアを開けっ放しにしておけばいいだろう」と切り返した。

安藤氏:最近、日清の社員は困ることがないから良くない、と思うことがあります。管理職の中にも前例を受け継ぐだけの人が出てきました。30代までの間に、頭が習慣づけられてしまうんですね。研究開発でも、今の人は整った設備でないと、研究できないとすぐ口にする。でも、僕は何もないところから、あり合わせの道具だけでチキンラーメンを作った。やる気さえあれば、何でもできますよ。

 今の若者を見ても、親がどうしても大学に行けと言うから行ったという人が多い。本当は苦学の方が中身のある学問ができるんですけどね。