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 日本の経営に大きな足跡を残した経営者へのインタビューをお送りするシリーズ。第3回は世界のSONYを生み育てた盛田昭夫氏の言葉を紹介します。1980年代、日本の対米貿易黒字が大きな問題となり、日本は米国から貿易不均衡の是正を強く要求されました。ジャパン・バッシング(日本叩き)が起きる中、盛田氏は毅然とした態度で自由な競争を守り、対等で協力的な日米関係を築くべきと主張しました。
 スティーブ・ジョブズにも影響を与えたとされ、米国でもっとも有名な日本人とも言われた、グローバルなリーダーでした。

掲載:1989年11月20日号(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

ソニーの盛田昭夫会長は「日米構造協議の成果は期待できない。インバランスの数字ばかり議論していたら行き詰まってしまう」と米国のシナリオに乗った日米関係の行方に恐れさえ感じている。「米国が日本の資本財をたくさん買っているのもインバランスの原因。貿易収支の中身を吟味し、米国の産業が再興する道を共に考えるべき」と日本独自のシナリオを米国に提示するよう訴える。(聞き手は本誌編集長、佐藤 富男)

盛田 昭夫氏
1921年1月愛知県生まれ、 68 歳。44年大阪帝国大学理学部物理学科卒業。46年、井深大現名誉会長と東京通信工業設立(58 年ソニーに社名変更)。71年社長、76年から会長。日米諮問委員会委員などを歴任し、現在は海外事業活動関連協議会会長、経団連副会長。 (写真/Bill Pierce/Getty Images)

 日米構造協議は来春に中間報告という形で一つのタイムリミットを迎えますが、見通しはどうでしょうか。

 日米が密接な間柄になってきたから、構造まで気になるようになってきたと思うんですが、しかし、構造というのは社会構造とか経済構造の問題ですから、よその国の人に言われて直るものじゃありません。日本だって政府の力でできるのは非常に少ない。米国に対しても、貯蓄が少な過ぎるだとか日本側が言っても、米国の政府レベルでは直せないですよ。
 だから、日米構造協議の場でお互いの国にとって不都合な点を出し合っても、効果は期待できない。日米交渉は段々とデッドロック(行き詰まり)に向かってしまっている。

 今の動きを見ていると、構造協議はどうせうまく行かないだろうから、日本バッシングをしておいて、それを口実にスーパー301条を行使しようと。そんなシナリオが米国で描かれているのでは。

 通商代表部のヒルズさんはそうじゃないと言っているが、米国の一部では成果が出ないならスーパー301条をやるという雰囲気があるようです。

 日米関係を打開する方法があるのでしょうか。

 どうすれば米国が満足するのか。仮に貿易収支のインバランスの数字を直すのが目的とすると、インバランスはなくなりようがないから米国の期待に沿うのは難しい。私が一生懸命に主張したいのは、インバランスの数字の交渉ではなくて、その中身を検証すべきだという点です。