全5578文字

日経ビジネスが報じてきたレジェンドたちのインタビューをお伝えするシリーズ。第2回は、米アップル創業者のスティーブ・ジョブズ氏です。ジョブズ氏は1976年にパソコン「アップル」を開発。85年に同社を去りましたが、97年、業績低迷に苦しむ同社に復帰。するとアップルは見事な復活を果たしたのです。カリスマ、ジョブズ氏が日経ビジネスに明かした再生の秘密、そしてアップルの本当の強みとは。

掲載:1999年3月8日号(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

 業績低迷に苦しんでいたアップルコンピュータが復活した。
 昨年8月に発売したカラフルなパソコン「iMac」が世界中で爆発的なヒットを呼び、開発体制の見直しなどによるリストラ効果も手伝って1998年度は3期ぶりの黒字決算となった。
 このアップル復活の立役者となったのが、97年9月、12年ぶりに暫定ではあるが最高経営責任者 (CEO)に復帰した創業者の1人、スティーブ・ジョブズ氏である。帰ってきたカリスマ、ジョブズ氏にアップルの急激な再生の秘密を聞いた。(聞き手は本誌編集長、小林 収)

スティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)氏
1955年2月米国生まれ、44歳。
76年、世界初のパソコン「アップル1」を開発し、翌年アップルコンピュータを設立。85年アップルを退社し、パソコンメーカーのネクスト・コンピューターを設立、CEO就任。86年に3次元CG制作会社ピクサーを設立し、CEO就任。96年12月、アップルがネクスト社を買収。ギルバート・アメリオ会長兼CEO(当時)の戦略顧問としてアップルに復帰。97年9月、アップルの暫定CEOに就く。公式の場でもジーンズ姿で現れるなど、米国西海岸の経営者の雰囲気を今も漂わす。(写真/Justin Sullivan/Getty Images)

アップル創業時の魂を社内外に吹き込む

 96年3月からアップルの最高財務責任者(CFO)兼執行副社長を務めるフレッド・アンダーソン氏は、復帰したジョブズ氏を指して言う。「アップルの社内にオリジナル・ソウルを戻してくれた」。瀕死状態ともいえたアップルの息を吹き返させたジョブズ氏は、どんな魂を吹き込んだのか。

ジョブズ氏:私が戻ってきたとき、アップルには明確な企業戦略がなく、これが最大の問題だった。
 だから私は、明確な戦略づくりとリーダーシップのあり方を変えることに、まず力を入れたんだ。情熱がない3分の1ほどの社員には辞めてもらった。起業したばかりの活力あるベンチャーのような企業にしたかったから、例えば、それまで払っていた巨額のボーナス支給をやめた。その代わりに、社員全員にストックオプションを与えたんだ。

 私はストックオプションが好きだね。誰かの働きで株価が1ドル上がれば全員に恩恵がもたらされるんだから。ストックオプションを導入してからは、社員全員がアップルをどう変えるか、目の色が変わってきたと思う。

 変えなければならないのは社内だけでなかった。「マッキントッシュを愛してはいるがアップルを憎んでいる」という多くのソフト開発者や周辺機器メーカーにも気を配ったよ(笑)。