日本人も知っておくべき大切なこと

 ベルトン氏の著書が伝える衝撃的なエピソードは、プーチン大統領率いるロシアと取引をしているすべての人々に関係する。日本も含まれる。最も深刻な主張がなされている個人の何人かは、日本政府や企業と頻繁に接触している。これには、北村滋・国家安全保障局長と定期的に会うパトルシェフ・ロシア連邦安全保障会議書記も含まれる。ロスネフチのセチン社長も何度も来日している。

 同書を読むと、ロシアの政治を支配する「統一ロシア」という政党と自民党が2018年に協力協定を結んだことが適切だったかどうか疑問を持つ読者も出てくるだろう。

 ロシアは日本の隣国であり、日本政府がロシアの指導部と協力する必要があるテーマも存在する。しかし、日本政府は、現在ロシアを支配している人々の本質を明確に理解すべきだ。この重要な著書が明確にしているように、「プーチンの手下たち」は元KGB高官からなる危険なグループである。犯罪組織との関係を通じて、彼らは一般のロシア人を犠牲にして非常に裕福になった。

 彼らはまた、民主主義国の政治を腐敗させるために彼らの悪銭を使用した。彼らは、米国を含む多くの国で政治を腐敗させることに成功した。日本で同じことを実現できないと考える理由はない。

 菅義偉首相は9月29日、プーチン大統領との最初の首脳電話会談で、できるだけ早く直接会いたいと伝えた。だが、そうする前に、菅首相と少なくとも同氏のアドバイザーは、プーチン大統領が率いるロシアの政治の現実を理解するため、この本を読まなければならない。プーチン氏が、日本の首相が親愛なるパートナーとみなすに値しない人物であることを完全に理解するだろう。

ジェームズ・ブラウン
テンプル大学ジャパンキャンパス 政治学上級准教授兼国際関係学科コーディネーター主な研究テーマは、ロシアの政治と現代の日ロ関係。1982年、北アイルランド・ベルファスト市生まれ。英国とアイルランドの国籍を持つ。2003年、英ヨーク大学政治学科卒業。2006年に英エディンバラ大学大学院にて国際・ヨーロッパ政治学修士課程を、2007年に英アバディーン大学大学院にて政治学研究修士課程を修了。2011年、アバディーン大学大学院にて国際関係学博士号を取得。2011年、大和日英基金の奨学金を得て来日。著書に「Japan, Russia and their Territorial Dispute: The Northern Delusion」(Routledge, 2017)、共著に「Japan’s Foreign Relations in Asia」(Routledge, 2018)がある。

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