プーチン大統領は憲法を改正し、最長で2036年まで大統領職にとどまることができるようにした(写真:ロイター/アフロ)

 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領を称賛する人が日本国内にはまだたくさんいる。特に安倍晋三首相(当時)は、ロシアのタス通信が2018年11月に掲載したインタビューで、プーチン氏は「私にとって親愛なるパートナーです」と述べた。同様に、森喜朗元首相も2004年4月、ロシアのクレムリンにおいて、プーチン氏を「私が非常に尊敬している人物であり、私の最も重要な友人である」という趣旨の発言をしている。

 日本の若者の多くもプーチン大統領を称賛している。米ピューリサーチセンターが2017年に実施した世論調査によると、18~29歳の日本人の49%がプーチン大統領に肯定的な意見を持っている。この割合は全国民では28%だ。米ハフポストなどメディアの報道によると、プーチン氏の写真が掲載されるカレンダーも、日本のデパートで毎年最も人気のあるカレンダーの1つとなっていた。

 ところで、プーチン大統領は実際にはどんな人だろうか。どうやって大統領になったのか。プーチン主導の政府システムは実際にどのように機能しているのか。同氏は本当に私たちの尊敬に値する人物なのだろうか。

 プーチン大統領は20年にわたってロシアの指導者を務めているが、これらの質問に対する答えは今まで明確でなかった。プーチン大統領の個人的な背景に関する情報や、彼の最も近い味方に関する情報を、非常に厳しく管理しているためである。

 けれども今、ある新しい本がプーチン政権の暗い歴史に光を当てている。英フィナンシャル・タイムズの元モスクワ特派員であるキャサリン・ベルトン氏(Catherine Belton)による『Putin's People: How the KGB took back Russia and then took on the West(仮訳:プーチンの手下たち:KGBがどのようにロシアを取り戻し、欧米に挑戦したか)』である。

 この本はまだ日本語に翻訳されていないが、ロシアと関係のある皆さんは、よく研究された重要な内容にすぐに注意を払うべきだ。プーチン政権に良いイメージをまだ持っている人も、この本を読んだら考えが変わるかもしれない。

KGBはロシアを取り戻した

 同書は、ソビエト社会主義共和国連邦が崩壊する直前の最後の数カ月に、KGB(国家保安委員会)が、大量のソ連通貨を海外に密輸したと指摘する。このいわゆる「秘密経済」により、ロシアの諜報(ちょうほう)集団は、1991年にソ連が崩壊した後も、財源と大規模な影響力を維持することができた。ボリス・エリツィン大統領の下で比較的民主的な時代を過ごした後、1990年代の終わりに、KGBの元有力者はこれらの秘密資金を使ってロシアの支配を取り戻した。国家の支配を取り戻す使命は、元KGB高官であるプーチン氏が1999年12月31日、エリツィン氏に代わって大統領(編集部注:「大統領代」を含む)に就任したときに完了した。

 大統領に就任した後プーチン氏は、エリツィン時代の政治に影響力があったオリガルヒというビジネスの大立者たちの力を厳しく制限し、国全体を自分の個人的な管理下に置く取り組みを進めた。プーチン大統領に完全な忠実を示したオリガルヒは富を保つことを許された。2003年に英サッカーチームのチェルシーFCを買収したロマン・アブラモヴィッチ氏(Roman Abramovich)はその一例である。

 一方、依然として独立した行動を続けようとした他のオリガルヒたちは、プーチン政権によって全面的に破壊された。そのうちの何人かは、経営していた会社を違法に押収され、刑務所に送られるのを避けるためにロシアから逃げた。

 この本の著者であるベルトン氏は、これらのうち何人かにインタビューしている。インタビュー対象者の一人に、セルゲイ・プガチョフ(Sergei Pugachev)氏がいる。同氏は、プーチン大統領が政治的に台頭する過程で重要な役割を果たしたが、その後、財産を没収され、ロシアからの逃亡を余儀なくされた。

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