全4116文字
2020年の欧州の政局は、この2人を中心に回る。英国のジョンソン首相(左)とドイツのメルケル首相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 2020年、欧州政局の最大の焦点は、1月31日に英国が欧州連合(EU)から正式に離脱することだろう。EUほど規模が大きく複雑な国際機関から、英国のような大国が離脱するのは、世界でも例がない出来事だ。1952年のECSC(ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体、EUの前身)創設以来、拡大と深化を続けてきた欧州統合に初めてブレーキがかかり、後退を強いられる。英国は、世界に広がる右派ポピュリズム革命の、欧州最初の犠牲者となる。

ブレグジットがやって来る

 さて2019年12月12日の英国議会下院総選挙でボリス・ジョンソン首相率いる保守党が圧勝した時、他の欧州諸国の政界や経済界では、「合意なきEU離脱が回避された」という安堵の声が強かった。

 実際、ジョンソン首相は12月20日、EUとの間で合意した離脱協定案を議会下院の採決で承認させることに成功した。「ブレグジット疲れ」という言葉まで生んだ過去1年間の堂々めぐりがまるで嘘だったかのようだ。

 テリーザ・メイ前首相が1年間に3回試みて失敗した議会承認を、ジョンソン氏が首相就任からわずか5カ月で成功させたことについて、他の欧州諸国の首脳たちも感嘆の声を上げた。ドイツのアンゲラ・メルケル首相が「議会での袋小路のような状態が終わったことは、良いことだ。ジョンソン首相の政局運営には脱帽する」と珍しくほめたほどだ。

 奇矯な発言や行動で、メディアから「道化師」と揶揄(やゆ)されたジョンソン氏だが、職業的政治家としての手腕はメイ氏よりも上だった。

 メイ前首相にとって致命傷となったのは、2017年に実施した前倒し総選挙だった。同氏は下院で議席の過半数を確保することに失敗した。これは、EUとの合意案を議会で通過させることを極めて難しくした。従ってジョンソン氏はまず総選挙で勝って、議会の安定過半数を確保してから、EUとの合意案をめぐる議会での採決に臨んだ。ジョンソン氏は政権政党が踏むべきオーソドックスな手順に従って、自らの政策目標を貫いたのだ。

ジョンソン氏が仕掛けた時限爆弾

 ただし欧州諸国の首脳たちが「合意なきEU離脱の回避」を喜ぶのは、早過ぎた。ジョンソン首相は、離脱協定に関連する法案の中にある「時限爆弾」を仕掛けたからだ。

 英国は2020年1月31日にEUから離脱する。ただし、両者の新しい関係を規定する細則が決まるのは、これからだ。つまりEUと英国は、ブレグジットという枠組みを協定によって肉付けしなければならない。