環球時報に表れる、中国政権のバイデン観

 バイデン次期政権に対する中国の見方は、バイデン当確後の11月8日に環球時報が掲載した胡錫進編集長の評論によくまとめられている。この胡錫進という人物は、自由かつ、時には刺激的な発信をして物議をかもすこともあるが、何といっても天下の「人民日報」直系の環球時報の編集長だ。国民世論を誘導したり、不満を発散させたり、観測気球を上げたり、いろいろな役回りを演じている。

 胡錫進は言う。米国のエリートたちの対中認識が変わった以上、バイデン氏も中国に対する強硬姿勢を維持する。人権問題での対応はさらに厳しいものとなり、対中圧力が緩むことはない。だが、トランプ大統領が対中圧力カードを切り過ぎているので、バイデン氏に残されたものは多くはなく、逆に感染症や気候変動などで米中の協力の可能性は大きくなる。中国当局は、バイデンチームと十分に意思疎通をし、米中関係の予測可能性を高めるべきだ。米中関係は敵対的な関係ではないものの競争分野は多い。だが広範に利益が交錯していることも事実であり、いずれ実体に見合った関係に落ちつく。

 バイデン政権の登場により米中関係が改善するという幻想を持つべきではない。しかし、米中関係を改善させるとの信念を放棄してはならず、米中関係を破壊させないように両国が共同して管理し努力すべきだ。米国の挑戦に対処する最も根本的な方策は、中国が強くなり、米国の圧力に屈することなく、乱れもせず、中国と協力することが結局は米国にとって最善の道だと思わせることにある。

 こういう見方をする背景には、「トランプ政権でもこの程度の対中圧力にとどまる。そうであれば中国は生き残れるし、さらに力をつけることができる」という読みがある。時間は中国に有利だという判断だ。確かに中国経済の規模が米国を越える時期は近づきつつあり、27年にはそうなるという予測も出てきた。中国経済の力と、何よりも巨大な国内市場の力が多くの国をひきつけ、米国との競争にも耐えられると判断するのも一定の合理性を持つ。

「国難が来た! 中国は団結し、習近平氏の下に結集せよ」

 しかし国内に目を転じれば、ナショナリズムがさらに高まっている。

 新型コロナウイルスの感染症が昨年末に武漢で発生し、その後数カ月、中国は大混乱に陥った。当局は事態を隠ぺいしたり、対応が遅れたりした。このとき、党や政府指導部に向けられた国民の不満や怒りはすさまじかった。習近平政権は大丈夫かと本気で心配したほどだ。中国共産党は、それこそ総力を挙げてコロナ対策に取り組み、4月にはほぼ抑え込んだ。そのころ欧米は逆に新型コロナウイルス封じ込めに失敗し、まん延させた。

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