バイデン氏が大統領となる米国を、中国はどうみるのか(写真:AP/アフロ)

 ジョー・バイデン氏が米大統領選で当選を確実にしたのに対し、中国が祝意を表明したのは遅かった。11月13日に外務省の副報道官が記者会見で祝意を述べたものの、習近平(シー・ジンピン)国家主席の祝電は同月25日になってからだった。12月15日になってようやく表明したロシアのウラジーミル・プーチン大統領よりは早いが、それでもやはり遅かった。

 ちなみに米テレビ局CNNがバイデン氏の当確を伝えたのは、11月8日の午前1時半頃。5時間後にツイッターで祝意を伝えた菅義偉首相は、G7首脳の中で最後だった。

 もちろん「内政不干渉」を大原則としている中国としては、米選挙の結果がはっきりしない段階での祝意表明は差し控えたいという気持ちもあっただろう。だが、バイデン次期政権がいかなる対中姿勢を取るか読み切れていないことも態度表明をためらわせた理由の1つと考えられる。

米国の真の怖さを知らなかった習近平政権

 中国は、今、必死になってバイデン次期政権の動きを探り、最も効果的な対応策を探っているはずである。しかし、「チャイナ・マシン」の力にも陰りがみられる。習近平政権は、有識者の声を広く拾い上げることに必ずしも成功していないからだ。上からの方針下達には熱心だが、広く公論を求めることは苦手のようである。後述するように、中国が正しい結論にたどり着けない可能性も、かなり高まってきている。

 米国が中国に対する基本姿勢を激変させたことに対する中国の感度は低かった。筆者の承知する限り、ワシントンの専門家たちの対中認識の変化は2015年に始まっている。それがワシントンのエスタブリッシュメントに広がり、17年1月のトランプ政権の登場とともに怒とうの流れとなった。同年12 月の「国家安全保障戦略」、18年1月の「国防戦略」において、中国は現状変更を図る「修正主義者」であり、「戦略的競争相手」であると認定した。米国において、「中国を抑え込み、長期的に対峙する必要がある」という党派を超えた政治的コンセンサスが出来上がったのだ。

 中国はこの変化に素早く対応できなかった。それは、習近平国家主席の世代の中国指導者も、中国社会も、相手を競争相手ないしは敵とみなしたときの米国の思考と行動のパターンに慣れていなかったからだ。米国の真の怖さを知らなかったということになる。

 これまで、このタフな役回りを上手に演じられる大統領は、ニクソン、レーガン、そしてブッシュ・ジュニアの3人だった。だが、ニクソンは中国との関係改善を図った本人であり、レーガンは「悪の帝国」ソ連の打倒に忙しかった。ブッシュ・ジュニアは就任早々こそは中国に厳しかったが、01年9月11日の米同時多発テロ事件以後は対テロ戦が国策の中心となり、国連安保理で拒否権を持つ中国との協調に転じた。

 台湾問題、チベット問題あるいは人権問題や経済摩擦など、米中の間にイザコザは絶えなかった。これらの問題に関し、米議会は中国に厳しく、米行政府は中国との実務関係を重視する対応をしてきた。米国は三権分立の国であり、立法と行政は分離され、場合によっては対立する。議会の最大政党の党首が首相となる日本の議院内閣制とは立て付けが異なっている。議会が、法律の制定、予算の認可、主要人事の承認を通じて行政をしばる。

 それでも米中関係は基本的に、米国が譲歩する形でイザコザを収めてきた。経済、外交、軍事、いずれをとっても中国は米国にとり小さな存在にすぎず、いずれ中国も米国が主導するシステムの中に安住するようになるだろうと思っていたからだ。ところが、中国が国力において米国に迫り、ついに米国を凌駕(りょうが)する分野まで出現した。その中国が自己主張を強め、力で自分の意見を通そうとするようになった。となれば、米国と衝突するのは時間の問題だった。

続きを読む 2/3 環球時報に表れる、中国政権のバイデン観

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