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EUとの交渉、さらにその先にある米国や中国との交渉を、誰がどのような体制で進めるのか、人事が注目点になりますね。

庄司:はい、そう思います。

スコットランド独立への思惑はとん挫

今回の選挙で、スコットランド国民党(SNP)が13議席を積み増して、48議席の勢力になりました。同党はスコットランドの独立を目指しています。議席増の余勢を駆って、スコットランド独立の是非をめぐる住民投票を求める声を高めることはありませんか。

庄司:保守党の大勝利によってそれは不可能になりました。住民投票を実施するには英議会の承認が必要です。議席の過半数を握るジョンソン氏は住民投票を認めない方針を明らかにしています。

 SNPのニコラ・スタージョン党首は、議会がハングパーラメント(第1党が過半数を割り込み、法案を通せず、議会が「決められない」状態になること)になり、同党がキャスチングボートを握る状況を想定していました。そうなれば、与党勢力に協力する条件として住民投票を承認させることができます。しかし、そうはならなかった。今後の作戦を立てることができず困惑しているのではないでしょうか。

 ここからの話は私の妄想ですが、こんな事態が考えられるかもしれません。スコットランドが、英領北アイルランドと同様の位置づけ、すなわち事実上の経済特区になることを要求する。SNPは独立の是非をめぐる住民投票の実施と並べてEU残留を主張しています。住民投票が実現できないなら、せめてEUへの実質的な残留だけでも勝ち取ろうとしてもおかしくありません。

まだ“平時”にはならない

最後にジョンソン政権の内政についてうかがいます。今回の大勝でEUからの離脱がほぼ確実になりました。すると、同政権を取り巻く環境が“戦時”から“平時”に戻るのではないでしょうか。ジョンソン首相は“戦時”に強いことは証明したけれども“平時”にはどうでしょう。発言内容がころころ変わるため、“平時”の宰相として信頼は得られていない、という見方をよく耳にします。

庄司:重要になるのはやはり景気を維持することでしょうね。景気が悪くなれば民心は離れます。特に重要なのは失業率の動向です。

 しかし、私はそれほど強く心配はしていません。ジョンソン首相は経済政策など自分が得意でない分野は保守党の他の人材に任せるでしょう。英国は官僚も優秀です。加えて、FTAをめぐるEUとの交渉は今後も波乱含みです。まだ“平時”にはならないのではないでしょうか。