中国と北朝鮮をつなぐ中朝友誼(ゆうぎ)橋。新型コロナ危機が訪れる前は、トラックが行き来していた(写真:ロイター/アフロ)
中国と北朝鮮をつなぐ中朝友誼(ゆうぎ)橋。新型コロナ危機が訪れる前は、トラックが行き来していた(写真:ロイター/アフロ)

 2020年10月の北朝鮮と中国の貿易額が、かつてない異常な状態になった。北朝鮮が新型コロナウイルス対策として国境封鎖を始めた1月末から、中朝貿易額は減少する傾向にあった。2月のように前年同月比であまり変化がなかった月もあるにはあったが、ほぼ全ての月で前年同月の実績を下回った(表)。10%を割り込む月も何度もあった。そして、10月はとうとう1%を割った。これは国連安全保障理事会による制裁の効果ではなく、北朝鮮が新型コロナウイルス対策として国境封鎖して、貿易を最大限に絞り込んだ結果である。

■2020年の中朝貿易額の前年同月比の変化
■2020年の中朝貿易額の前年同月比の変化
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 もちろん、中朝貿易額が全くゼロになったわけではないが、ほとんど中小企業同士の取引金額のレベルにまで落ち込んだ。約2500万人と約14億人の人口がある国同士の貿易とはとても考えられない。

 しかも、これは中国側より人口が少ない北朝鮮側の方針を反映したものである。中国側ではこれほど厳しい貿易制限を実施していない。北朝鮮側が異様に厳しい貿易制限を課しているのである。国境貿易や密輸、未公表など貿易データに表れない貿易もあるのだが、それらを考慮せずに貿易データ上に現れる数字だけを見れば、北朝鮮の貿易の80~90%以上(年度や計算によって異なる)が対中貿易であることを考えると、これは異常な落ち込み方である。

自国で全てを生産できるのが理想

 さすがに、これは新型コロナウイルス対策だけが原因とは考えにくい。北朝鮮の国内で、何らかの理由で、新型コロナウイルス対策をきっかけにして中国との貿易を制限したいと考える勢力がいるからだと考えられる。

 もっとも中朝貿易に比べると規模が小さいロシアとの貿易において中朝貿易ほどの落ち込みはない。それでも全体的に前年比で縮小しているのは事実であって、相手国がどこであっても全体的に貿易を制限することが北朝鮮の方針であることは間違いないだろう。

 北朝鮮に貿易を制限したがる勢力がいることは十分に考えられる話である。北朝鮮はもともと、最初の最高指導者であった金日成(キム・イルソン)の時代から「社会主義自立的民族経済建設路線」を経済政策の軸にしていた。これは「有無相通」、つまり、足りないものを輸入し、余ったものを輸出するというものだ。経済活動において貿易が占める役割は重要ではなかった。基本は、自国で全てを生産し、自国でそれを消費する。いわば「地産地消」を理想的な経済システムと考えていたのである。北朝鮮がよくスローガンとして掲げる「自力更生」はこれのことである。

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