そして問題は、SPY-6と同様に、SPY-7とイージス戦闘システムのインテグレーションとテストを要する点である。この点についてロッキード・マーチンは「イージス戦闘システムをプライムコントラクター(主契約者)として開発してきた」「LRDRの試作機を使って衛星を追尾し、その情報を火器管制システム*に伝えるテストに成功した」としている(関連記事「ロッキード・マーチン『SPY-7とイージスは完全に統合されている』」)。それでも、SPY-7とイージス戦闘システムのインテグレーションは別物であり、開発と試験に関する日本のコスト負担を懸念する声がある。

*:イージス戦闘システムを構成する主要機能の1つ。レーダーからの情報を基にミサイルを制御する

 実は、SPY-6もSPY-7も、イージス戦闘システムとのインテグレーションと試験を迅速化する変更が施されている。レーダーを制御する機能やアンテナが探知した情報を処理する機能を、イージス戦闘システムからレーダー側に移しているのだ。よって、SPY-6やSPY-7との連携において、イージス戦闘システムはレーダーから目標探知データを受け取るだけでよい。

 現行のSPY-1レーダーは、レーダーの制御や目標探知情報の処理もイージス戦闘システムが受け持つ仕組み。これだと、新しいレーダーが登場するたびに、イージス戦闘システムの機能を改修する必要が生じる。

懸念される、技術より政治の優先

 当節の防衛装備品は、一通りの試験を完了して、配備し、運用を開始した後も、そのまま使い続けるわけではない。発展・改良を継続的に実施する。

 ことに、SPY-6やSPY-7のようにデジタル化したレーダー、あるいはイージス・システムのような装備品は、それを制御するソフトが要であり、そのソフトは継続的に改良される。パソコンやスマートフォンと同じで、ソフトのバージョンアップで能力を向上させたり、新しいソフトを追加して機能を拡張したりするのが当たり前のように起きる。

 筆者は、これを指して「永遠の未完成品」と言っている。これは未熟な装備品に国の守りを委ねているという意味ではない。「これで完成」というマイルストーンはあってないようなもので、ライフサイクルを通じて改良が続くという意味だ。

 日本では「完全主義者」が肯定的に評価される。完成度の高い製品を送り出さなければ許されない、という風潮が一般的に存在する。それ自体は悪いことではないが、それが「完成品ではないものはまったく使えない」という認識につながるのであれば間違いであると指摘したい。

 また、イージス・アショアをめぐる動向は、ここまで述べてきたようなエンジニアリングの問題というよりも、もはや政治の問題と化している。そうであれば、「技術的観点から見て正しいこと」がすんなりと受け入れられない可能性が高くなる。イージス・アショア関連のニュースに接する際には、そうした事情を念頭に置くべきであろう。

井上 孝司(いのうえ・こうじ)
1999年春にマイクロソフトを退社して独立。現在は航空、軍事、鉄道の分野で著述活動を展開中。主な著書に『最新 ミサイルがよ~くわかる本』など。
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3/14、4/5ウェビナー開催 「中国、技術覇権の行方」(全2回シリーズ)

 米中対立が深刻化する一方で、中国は先端技術の獲得にあくなき執念を燃やしています。日経ビジネスLIVEでは中国のEVと半導体の動向を深掘りするため、2人の専門家を講師に招いたウェビナーシリーズ「中国、技術覇権の行方」(全2回)を開催します。

 3月14日(火)19時からの第1回のテーマは、「特許分析であぶり出す中国EV勢の脅威」です。知財ランドスケープCEOの山内明氏が登壇し、「特許分析であぶり出す中国EV勢の脅威」をテーマに講演いただきます。

 4月5日(水)19時からの第2回のテーマは、「深刻化する米中半導体対立、日本企業へのインパクト」です。講師は英調査会社英オムディア(インフォーマインテリジェンス)でシニアコンサルティングディレクターを務める南川明氏です。

 各ウェビナーでは視聴者の皆様からの質問をお受けし、モデレーターも交えて議論を深めていきます。ぜひ、ご参加ください。

■開催日:3月14日(火)19:00~20:00(予定)
■テーマ:「特許分析であぶり出す中国EV勢の脅威」
■講師:知財ランドスケープCEO 山内明氏
■モデレーター:日経ビジネス記者 薬文江

■第2回開催日:4月5日(水)19:00~20:00(予定)
■テーマ:「深刻化する米中半導体対立、日本企業へのインパクト」
■講師:英オムディア(インフォーマインテリジェンス)、シニアコンサルティングディレクター 南川明氏
■モデレーター:日経ビジネス上海支局長 佐伯真也

■会場:Zoomを使ったオンラインセミナー(原則ライブ配信)
■主催:日経ビジネス
■受講料:日経ビジネス電子版の有料会員のみ無料となります(いずれも事前登録制、先着順)。視聴希望でまだ有料会員でない方は、会員登録をした上で、参加をお申し込みください(月額2500円、初月無料)

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