
想定外の経済減速に直面している中国政府は今後、外国企業の誘致を一層積極化させる。日本企業はこれを好機ととらえ、ビジネス環境の改善を中国政府に求めるべきだ。そのとき、中国でビジネスを展開する日本企業の事業支援と経済交流活発化のための組織である中国日本商会(商工会議所に相当)の活躍が期待される。現行の活動は十分とは言えない。以下の4つの点で能力向上を図るべきだ。
(聞き手:森 永輔)
瀬口清之キヤノングローバル戦略研究所研究主幹(以下、瀬口氏):今回は、中国日本商会を取り上げます。同商会は、中国でビジネスを展開する日本企業の事業支援と経済交流活発化のための民間組織だ。
ナンシー・ペロシ米下院議長が8月に台湾を訪問した後、日米中関係はにわかに緊張が高まりました。しかし、11月14日の米中首脳会談では衝突回避のための対話の継続を確認し、17日の日中首脳会談では建設的かつ安定的な日中関係構築を目指す方向が示され、小康状態を取り戻す方向にあります。

中国は外国企業の誘致を再び活発化させるでしょう。このタイミングを逃すことなく中国日本商会のパワーアップを図るべきだと考えます。日本企業の要望を中国政府に伝える、日本企業の交渉力向上を支援する、中国ビジネス環境について正しい情報を日本国内に伝える、などにおいて一層貢献することが期待されます。
予想を上回る新型コロナウイルス感染拡大と「ゼロコロナ政策」の副作用が続いたことなどを背景に中国経済は想定外の減速に直面しています。消費者は財布のひもを縛り、経営者は先行きの不透明さを懸念して投資を控えている状況です。これが雇用にも影響している。成長の勢いを取り戻すには対外開放が欠かせません。外国企業が持つ資本力、技術力、雇用創出力を生かすことです。
中国米国商会や中国EU商会は対外開放の道しるべ
そのためには、グローバル市場で高い競争力を有する優良外資企業に対してより魅力的な投資環境を提供する必要があります。それを目指す中国政府に、改善すべき課題を包括的かつ公正に示すことができるのは誰でしょう。その役割を今、果たしているのは中国米国商会や中国EU(欧州連合)商会です。それぞれの母国政府の政治外交の動きから独立して、中国政府に対して活発に働きかけています。
中国米国商会と中国EU商会はどんな活動をしているのですか。
瀬口氏:中でも力を持つのは中国EU商会のイェルク・ウトケ会長。2004~07年、14~17年、19年以降現在に至るまで、合計3回、10年以上にわたって会長職を務めており、中国政府とも欧州各国の政府とも太いパイプを築いています。その発信力には定評があり、米国や欧州のメディアは同氏の発言を頻繁に取り上げています。
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