変わる日米中関係の中で、菅義偉首相は日本の針路をどう考えているか(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

(「日米中関係を考える、日本人を不安に陥れる3つの変化」も併せてお読みください)

 前回は、日本を取り巻く国際環境を整理した。この中で日本の平和と繁栄、日本国民の幸福追求を可能とする外的条件を整えていくのが、日本外交の大目標ということになる。日本の生き延びる道の追求でもある。では、具体的にどう対応すればよいのであろうか。

 日本の平和と繁栄にとり、最も重要なのが安全保障である。安全保障が担保されなければ繁栄も国民の幸福もない。安全保障は経済とは全く異なる理屈(ロジック)で動く。ウィンウィンの関係は成り立たず、勝つか負けるかであり、相手を決して信じることはできない。全世界の安全保障の責任者が、この考えを共有している。

リアリズムにのっとった安保政策が不可欠

 極めて遺憾なことだが、国際政治においては19世紀にドイツで言い出されたレアルポリティーク(現実政治)の考え方が今でも強い影響力を持つ。徹底した現実主義であり、力を重視する。

 毛沢東の「政権は銃口から生まれる」という言葉に代表されるように、中国共産党にもこの考え方が強くある。従って軍事安全保障の分野での対応をしっかりしておかないと、他の分野の対応もうまくいかなくなる。日米協力を基本にして日本の安全保障を考えることは当然のことであり、また日本の防衛力を整備しないと米国との安全保障協力が円滑に進まない局面も出てくるであろう。中国の軍事戦略と軍事力を正確に見極めて、安全保障のロジックに従い適切な対応をとることになる。

 2012年秋、日本のいわゆる「国有化」を契機に、中国は日本の領土である尖閣諸島の現状を本格的に実力により変更しようとした。その結果、米国はようやく尖閣諸島に日米安全保障条約が適用されることを再確認した。

 正確には、米国は同条約第5条に従い、尖閣諸島が日本により実効支配されていることを認め、米国は条約の発動に同意しているのであり、尖閣諸島を日本の領土と認めたわけではない。ここに着目し、日本による尖閣諸島の実効支配に中国が挑戦するのは、米国の関与を排除する狙いがあるという見方もある。日本としては、日本の実効支配に対する中国の挑戦を成功させないように、海上保安庁の態勢強化をはじめ、取るべき措置はすべて取って、この危機を乗り切らなければならない。

 日本の実効支配を堅持するという決意を具体的行動で明確に示した後、日本は尖閣諸島問題について中国との話し合いのテーブルに着くべきである。「中国との間に領土問題はないので話し合いはできない」と主張するのであれば、それは北方領土や竹島に関するロシアや韓国と同じ立場に堕することになる。紛争を話し合いによって平和的に解決することは、国連憲章や日中平和友好条約の要求する国際ルールである。話し合いのテーブルに着くことは、中国への譲歩ではない。「国際ルールを堅持する」という日本の基本姿勢を国際社会に強くアピールすることにつながる。

続きを読む 2/3 安全保障のロジックですべてを見るのは誤り

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