中国が台頭する一方で、米国は孤立に向かった(写真:AFP/アフロ)

(「日米中関係を考える、日本が取るべき進路とは」も併せてお読みください)

駐中国大使を務め、中国をよく知る筆者が2回にわたって日米中関係を考える。前編では、3国を取り巻く環境の変化を整理する。ここには、3つの側面がある。第1は、現在の国際秩序が維持できなくなっているように見えること。第2は米国の変化である。そして第3が中国の台頭が引き起こしている衝撃だ。中国は独自の文化文明を擁するがゆえに、国際秩序との間に摩擦を引き起こしている。

 前回「中国の五中全会を読む、『建軍百年奮闘目標』が初登場」の回で、厳しくなる日米中関係の中で、日本はどういう戦略を描き、生き抜いていくべきなのかについて、私の考えをお伝えすると約束した。この日米中関係は、どのような世界の構図の中にあるのであろうか。具体的な対応策を考える前に、我々が置かれている状況について少し頭の整理をしてみよう。

 確かに世界は大きく変わろうとしている。グローバル化には逆風が吹き、米欧に既存の国際秩序を守ろうとする意気込みが感じられなくなってきている。中国の急激な台頭は世界に激震を与え、「中国スタンダード」で世界を振り回している。肝心の米国は、ドナルド・トランプ大統領の登場に象徴されるように、もう昔のような米国ではなくなった。バイデン大統領となり、少しは元に戻るであろうが、米国社会そのものがすでに大きく変質している。

 これらを称して、世界は「百年に一度の大変化の渦中にある」という見方を耳にする。だが、そうとも言えない。猪木武徳氏は『戦後世界経済史-自由と平等の視点から』において、経済のグローバル化が紆余曲折(うよきょくせつ)を経ながらも19世紀後半から今日までプロセスとして進んでいることを示している。今後も続くということだ。また20世紀も、2つの世界大戦をはさんで、まさに波乱万丈(はらんばんじょう)の時代であった。こう見てくると、現在を「百年に一度の大変化」と呼ぶのは、いささかバランスを失するように思える。

 それでは現在、国際社会に何か大きな変化が起こりつつあると我々が感じるのは、なぜであろうか。その変化は、次の3つの面に顕著に表れている。1つは、現在の国際秩序が維持できなくなっているように見えること。2つ目は、米国の変化である。そして、3つ目が中国の台頭が引き起こしている衝撃だ。

 この変化のプロセスを科学技術の加速度的な進歩がさらに複雑にしている。科学技術分野において国際的な管理メカニズムが存在していないことが、事態を著しく不安定化させ、悪化させている。そんな状況にある世界を新型コロナウイルスが直撃し、おそらく変化のプロセスを加速化させる方向で作用するであろう。

続きを読む 2/3 米国を孤立主義に陥らせることなく巻き込

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