オバマ外交を支えたバイデン氏(左)とスーザン・ライス氏(右)(写真:AP/アフロ)
オバマ外交を支えたバイデン氏(左)とスーザン・ライス氏(右)(写真:AP/アフロ)

 ドナルド・トランプ氏が2016年11月の米国大統領選挙に勝利したとき、ロシアの国会議員は国会議事堂内でシャンパンを酌み交わして祝った。今回、彼らはジョー・バイデン氏の勝利を受けて、酒で悲しみを紛らわしたかもしれない。

 ロシアの指導者たちは、バイデン次期大統領と同氏が率いる外交チームについて特に2つの深刻な懸念を抱いている。1つ目は、ロシアが敵と見なす北大西洋条約機構(NATO)を強化する意志。そして2つ目は、ロシアを含む世界中に向けて、民主主義と人権を積極的に訴える政策である。

 バイデン氏は、ウラジミール・プーチン大統領をトランプ大統領より強く批判する。米ロ関係はこれまでより緊迫する可能性が高い。

バイデン氏は「完全な反ロシア」ではない

 新しい米国大統領の多くは外交経験が少なく、その外交政策がどうなるか、就任後しばらくたたないと明確にならない。しかし、バイデン次期大統領の場合は逆だ。同氏は36年にわたって米上院で議員(デラウェア州選出)を務めてきた。上院外交委員会の委員長を4年間務めてもいる。さらに、2009~17年に、バラク・オバマ大統領の副大統領として外交の現場を経験している。

 バイデン氏が持つ豊富な外交経験には、ロシア関連も多く含まれる。1979年に議会代表団のリーダーとしてモスクワを初めて訪問。ソビエト連邦(当時)のアンドレイ・グロムイコ外相と会談した。

 バイデン氏は長いキャリアの中で、「完全な反ロシアではない」ことを何度か示してきた。例えば1970年代に、同氏は緊張緩和(デタント)政策を支持し、ソ連との核軍備管理協定に合意する必要を強調した。

 2009年には、オバマ政権の副大統領として、ロシアとの「リセット」(再起動)を進める政策に積極的に関与している。この政策の目的は、プーチン氏よりも親欧米と見なされていたドミトリー・メドベージェフ氏が大統領(当時)である間に関係を改善することにあった。バイデン副大統領は2009年2月に行った外交演説において、「リセットボタンを押して、あらゆる分野においてロシアと共同作業をするときが来た」と述べた。

反ロシアではないが、反プーチンではある

 バイデン氏は「反ロシア」とは言えないが、「反プーチン」ではあるように思われる。2011年にロシアを訪問した際、野党の政治家と会談し、プーチン氏を大統領職に復帰させないよう助言。これがプーチン氏を怒らせた。

 プーチン氏が2012年3月にロシア大統領の職に戻った後、米ロ関係は悪化の一途をたどった。2年後、ロシアがクリミア半島を武力で併合したことにより、オバマ政権はリセット政策を終わらせた。

 ロシアがウクライナのクリミア半島を編入した際、バイデン副大統領はウクライナを強く支持。2014年11月にキエフを訪問した際、ロシアによる「侵略(aggression)」を公に批判した。さらに、バイデン副大統領は、ロシアを罰する強力な経済制裁措置の導入を支持した。2017年1月に副大統領の任期が終了する直前に、世界経済フォーラムのスピーチの中で、プーチン大統領が率いるロシアを自由な国際秩序に対する最大の脅威であると述べた。

 バイデン氏によるプーチン政権批判は、今回の大統領選の間も続いた。例えば、10月22日のテレビ討論で、バイデン氏はプーチン大統領を「乱暴者(thug)]と呼んだ。さらに、ロシアが米国民主主義に干渉したことに対して「代償を払わせる(pay the price)」と警告した。これに対してプーチン大統領は、バイデン氏が「反ロシア的なレトリック」を繰り出していると非難している。

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