証言に臨むウィリアム・テーラー氏(右)とジョージ・ケント氏(写真:ロイター/アフロ)

 11月13日、米ワシントンでウクライナ疑惑をめぐる大規模な公開メディア戦争が始まった。下院情報委員会が従来の秘密会形式による大統領弾劾(だんがい)調査公聴会を公開形式に切り替え、ウィリアム・テーラー駐ウクライナ米国代理大使と国務省のジョージ・ケント元ウクライナ担当次官補代理がテレビカメラの前で長時間証言したのだ。2人は、米国の現職大統領が軍事援助供与と引き換えに自己の政敵に対する収賄捜査をウクライナ大統領に要請したと述べた。

 いつもの通り、トランプ氏はこの2人の職業外交官による強烈な反撃を無視しようとしている。単なるフェイクニュース、魔女狩り、もしくはトランプ政権を破壊しようとするディープステート(国家内国家、影の政府)からの攻撃などと切り捨てるのだろうが、もちろん米国メディアは黙っていない。CNNはこの公聴会を1日中報じていた。米大統領選は既に佳境に入りつつあると言ってもよいだろう。

 ところが、これに対する日本での関心はいまひとつ。14日付朝日新聞も、「米大統領選をめぐり、トランプ大統領がウクライナに介入を依頼したとされる『ウクライナ疑惑』に関し、弾劾調査を進める米下院情報委員会は13日、初めての公聴会を開いた」などと淡々と報じていた。さらに、国際情勢に関心の高い筆者の友人の中にも、米・ウクライナ両大統領の電話会談がなぜ「スキャンダル」になるのか、いぶかる向きが少なくなかった。

 しかし、今回のトランプ大統領の行為は「贈収賄」という大統領弾劾の要件の一つになりかねない大事件だ。日本に置き換えて分かりやすく説明する。仮に、日本がアフリカの某国に経済援助を実施するとしよう。そこに政治家や大臣が介入してキックバックを要求すれば、これは完全に賄賂だ。では、金銭でなく、「自分の親しい友人への特別の配慮」を求めたらどうか。もちろん、それも贈収賄だろう。これがウクライナ疑惑の本質である。

 ちなみに、ウクライナ疑惑を含む、米国内政外交の詳細については、米スティム・ソンセンターの東アジア共同部長で、キヤノングローバル戦略研究所の同僚でもある辰巳由紀主任研究員の「デュポン・サークル便り」が面白い。先週、2回目のコラムが掲載された。来年2020年に実施される大統領選挙に向け、米国の内政外交をワシントンから直接報告する彼女のコラムは今後とも一読に値すると思う。

続きを読む 2/2 トランプ政権の「終わりの始まり」か?

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