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ドイツのための選択肢(AfD)などの動員で行われたデモ。イラクとシリアからの移民によるとされる殺人事件に抗議するため集まった(写真:AFP/アフロ)

 旧東ドイツでは、旧西ドイツよりも右派ポピュリズムが高まりを見せている。旧東ドイツでは右翼政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の人気が旧西ドイツよりも高い。2017年の連邦議会選挙、今年の欧州議会選挙ともに、AfDは旧東ドイツで20%を超える得票率を記録した。これは旧西ドイツでの同党の得票率の2倍を超える。

 AfDは2017年の連邦議会選挙で第3党となり、約100人の議員を送り込んだ。これは旧東ドイツの有権者の強力な支持なしには不可能だった。ドイツの全ての州議会に議席を持っている。

旧東ドイツでの右派ポピュリズムの高まり

 今年9~10月にザクセン州、ブランデンブルク州、チューリンゲン州で実施された州議会選挙でも、AfDは得票率を前回の選挙に比べて2~3倍に増やし、これらの3州で第2党になった。キリスト教民主同盟(CDU)やドイツ社会民主党(社民党、SPD)の得票率は、どの州でも大幅に減った。バイエルン州トゥッツィング政治教養センターのウルズラ・ミュンヒ所長は、「AfDは旧東ドイツで地域政党として定着するだろう。AfDの躍進は、一時的な現象ではない」と指摘する。

 AfD幹部の発言には、排外主義、人種差別主義、反ユダヤ主義、ナチスの犯罪の矮小(わいしょう)化などの傾向がはっきりと表れている。彼らは、第2次世界大戦後の西ドイツ政府・社会の歴史認識や常識を修正しようとしているのだ。つまりこの国の時計の針を戻そうとする過激政党だ。

 例えば11月13日には、連邦議会・法務委員会のシュテファン・ブラントナー委員長(AfD所属)が、委員たちの投票によって更迭された。同氏は、ドイツのある歌手が連邦功労十字章を授与されたことについて、「この歌手はAfDを批判したために国から勲章をもらえた。まるでユダへの報酬だ」とツイッターに書き込んだ。

 新約聖書によると、「イスカリオテのユダ」はユダヤ人で、キリストの12使徒の1人だった。彼はキリストを裏切って群衆と祭司長たちに引き渡した。ユダはその報酬として銀貨を受け取ったが、キリストが磔刑(たっけい)に処せられると聞くと、銀貨を神殿に投げ込んで自殺した。このエピソードを基にして、反ユダヤ主義者はしばしば「キリストを裏切って殺したのはユダヤ人だ」と非難する。

 ブラントナーの発言については、政界・言論界から「反ユダヤ主義の表れ」という強い批判が上がった。議会の法務委員長が委員の投票によって更迭されたのは、この国の歴史で初めてのことだ。筆者の知人の連邦議会議員(キリスト教社会同盟=CSU所属)は、「ブラントナーは、『私にはユダヤ人を非難する自由もないのか』と不満を述べていた。AfDはファシストの集まりだ」と語っている。AfDの連邦議会進出が、この国の政治をいかに混乱させているかを如実に表す出来事だ。

 奇妙なことにAfDのガウラント党首、ワイデル院内総務、チューリンゲン州のヘッケ支部長、ブランデンブルク州のカルビッツ支部長はいずれも東ドイツ人ではなく、旧西ドイツの出身だ。