
中国共産党の第19期中央委員会第6回全体会議(6中全会)が11日閉幕した。新聞各紙は毛沢東、鄧小平に続く第3の「歴史決議」を採択することにより、習近平(シー・ジンピン)総書記(国家主席)が毛、鄧と並ぶ権威を確立し、来年秋の党大会で異例の3期目に就任する体制を固めたと報じた。
さらに、16日には、ジョー・バイデン米大統領と習国家主席がオンラインでの会談を実施。メディアは「米中双方の理解が深まった」などと評価する識者の声を伝える一方、「米中対立の構図は変わらず、偶発的な衝突を避けるにはコミュニケーションの維持が必要」などと報じている。
この「歴史決議採択」と「米中首脳会談」に関する内外の報道や評価はほぼ出尽くしており、あえてここで繰り返す必要はないだろう。むしろ筆者は、一見したところ無関係にみえるこの2つの政治イベントが、米中首脳レベルでようやく始まった「相手の腹の探り合い」プロセスの一環ではないかと考えている。今回はこの点を掘り下げてみたい。
歴史決議と米中首脳会談は同期している
今回の米中首脳会談後、「米政府高官」がバックグラウンド・ブリーフィング(背景説明)を行っている。同高官は、今回は「報道に値するもの」がないが、会談の目的は「米中の競争を責任をもって管理し、そのためのガードレールを作る方途を議論することに尽きる」と述べた。要するに、米側は合意や議論の進展などは期待しておらず、中国側の出方を見ながら、今後激化する「競争」を「暴走」させないためのヒントを得ることに主眼を置いていたのだろう。
中国側も米側と同様、この時点で相手に譲歩する気など毛頭ない。むしろ、トランプ政権以降、中国により厳しくなった米国との長期的対立を覚悟しつつ、米側の真意を探りたかったのではないか。
そうだとすれば、中国首脳としては、懸案となっていた6中全会での第3の「歴史決議」採択により政治的立場を一層強化してから、対米協議に臨むのが王道だろう。6中全会と米中首脳会談のタイミングは「連動」していた、と筆者は見ている。
今回の歴史決議はこれまでと性格が異なる
今回、採択された決議の正式名称は「党の100年にわたる奮闘の重大な成果と歴史経験に関する決議」だ。興味深いことに、同決議は過去2回の歴史決議について次のとおり説明している。
●1945年に党の第6期7中全会で採択した「若干の歴史的問題に関する決議」、1981年に党の第11期6中全会で採択した「建国以来の党の若干の歴史的問題に関する決議」は、党の重大な歴史的事件と重要な経験・教訓について、事実に基づき、真理を求め、実際に即して、物事を進めることで総括したものである。
●重大かつ歴史的に最も大切な時期において全党の思想と行動を統一し、党と人民の事業を推進することに対して重要な指導的役割を発揮したこれらの決議の基本論述と結論は現在でもなお通用するものだ。
要するに、過去2回の「歴史決議」は「建国の父」毛沢東と「改革開放」を主導した鄧小平が、それぞれ政敵との権力闘争に勝利し、若干の歴史的「問題」、すなわち「過去の誤り」を否定し総括するためのものだった。ところが、今回の決議の目的は必ずしも「過去の否定」ではない。主たる目的は「習近平思想礼賛」というより、過去100年間の中国共産党の「重大な成果と歴史経験」を振り返ることだった。少なくとも決議にはそう書いてある。
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