
中国で「高度成長時代は終わった。もう戻らない」という認識が急速に広まっている。エコノミストはもちろん、企業経営者や消費者も潮目の変化を感じ取り、投資や消費を抑える方向に向かっている。このタイミングで、経済政策運営の司令塔が交代する。「改革開放」を継続する意図はあるが、果たして実行できるのか。第3期習近平(シー・ジンピン)政権は、発進早々から大波を受けることになる。中国経済に詳しい瀬口清之キヤノングローバル戦略研究所研究主幹に聞いた。
(聞き手:森 永輔)
瀬口清之キヤノングローバル戦略研究所研究主幹(以下、瀬口氏):今回は、中国で「高度成長時代は終わった。もう戻らない」という認識が急速に広まっている――というお話をしたいと思います。エコノミストたちの認識はもちろん、企業経営者や消費者もこの潮目の変化を感じ取っている。それが彼らの行動に表れています。
中国経済について以前から、2025年前後には高度成長時代が終焉(しゅうえん)を迎え、次の安定成長期のフェーズへと移行する過渡期に入るとみられていました。そのタイミングが予想より3年ほど早まり、今まさに訪れています。6つの下押し要因がこの時期を早める役割を果たしています。

「2025年前後に高度成長時代が終焉を迎える」とみられていたのはなぜですか。
瀬口氏:以下の4つが要因です。(1)少子高齢化(生産年齢人口減少)の加速、(2)都市化のスローダウン、(3)大型インフラ投資の減少、(4)国有企業の業績悪化です。人口の増加、都市化の進展、大型インフラ投資の実施など、これまで中国経済の高度成長を推進してきたエンジンが力を失うのが2025年前後とみられていました。
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