赤の広場の光景(写真:AFP/アフロ)

 コロナ禍の困難な状況の中で、ロシアの経済はこれまでのところ、専門家が示す悲観的予想に反して健闘している。しかし、現在のロシア経済は、内外で深刻な障害に直面しているのが実態だ。最悪の事態は、まだロシアに到来していないのかもしれない。

 新型コロナウイルスが2020年3月にロシアで広まり始めたとき、多くのロシアおよび外国の専門家は、ロシア経済は非常に悪い影響を受けると予測した。GDP(国内総生産)は欧米以上に落ち込む、失業の急増、一般ロシア人の生活の質の大幅な低下、といった具合だ。石油の輸出に大きく依存するロシア経済は、新型コロナ危機により需要が大幅に減少するため、他の国々よりも深刻な影響を受けると予想された。

 この半年間、ロシアは確かに高レベルの感染症拡大に苦しんできた。米ジョンズ・ホプキンス大学のまとめによると、10月11日までに182万2345人の感染者が確認された。これは、世界で5番目に多い人数である。新型コロナウイルス感染による死亡者は同日までに3万1326人に上る。これは世界で13番目だ。ただし、英国フィナンシャル・タイムズ(FT)は、実際の死亡者数はこれらの値よりも大幅に多い可能性があると報道している。

 しかし、ロシア経済は堅牢(けんろう)に見える。ロシア中央銀行のデータによると、4~6月期のGDPは、前年同期比で8.5%減少した。通常なら好ましい数字ではないが、新型コロナ危機がもたらした悲惨な影響を考慮すると、負の影響を軽微にとどめたと捉えることができるだろう。

 8.5%減は、ロシア中央銀行が発表していた公式予測9%減よりも小さな落ち込みにとどまった。諸外国の実績よりもマイナス幅が小さかった。同じ期間に米国は9.5%減、EU(欧州連合)は14.4%減、英国は21.7%減を記録している。

 7~9月期のGDPも、ロシアは3.8%減にとどめている。

世界5位の経済大国へ

 新型コロナ危機の影響を比較的軽微にとどめたことは、ロシア政府内に強い満足感をもたらしたようである。例えば、マクシム・オレシキン経済担当大統領補佐官は8月末に、他の国の経済の方がより大きく縮小するため、ロシアの経済規模は今年世界第5位に浮上することが期待されると発言した。この主張は、IMF(国際通貨基金)が6月に発表した世界経済予測に基づく。

 ロシア政府は、経済大国(購買力平価で計算)のリストにおいて世界第5位に入るという具体的な目標を設定していたため、実現への期待は大きい。オレシキン氏は「奇妙なことに、危機は多くの点でロシアの役に立っている。計画より2年早く、この目標を達成する」と意気込む。

続きを読む 2/3 ロシア経済に不確実性もたらす5つの懸念材料

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り2058文字 / 全文5442文字

日経ビジネス電子版有料会員になると…

人気コラムなどすべてのコンテンツが読み放題

オリジナル動画が見放題、ウェビナー参加し放題

日経ビジネス最新号、9年分のバックナンバーが読み放題

この記事はシリーズ「世界展望~プロの目」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。