台湾をめぐる米中の対立は収まる気配がみえない。米国は、中国が台湾への軍事的威圧を高めるのを問題視し、中国への姿勢を硬化させる。これに対して中国は、米国による武器供与の拡大をはじめとするトランプ政権以来の台湾支援の拡大に反発する。いま日本がなすべきは、米中両国間の緊張を緩和すべくバランサーの役割を果たすことだ。安倍政権はこの役割を果たしていた。キヤノングローバル戦略研究所の瀬口清之研究主幹に聞いた。

(聞き手:森 永輔)

台湾をめぐる米中の対立は収まる気配がみえない(写真=AFP/アフロ)
台湾をめぐる米中の対立は収まる気配がみえない(写真=AFP/アフロ)

キヤノングローバル戦略研究所の瀬口清之研究主幹(以下、瀬口):今回は台湾をめぐる米中対立についてお話ししたいと思います。最近の日本政府の対応は当事者意識に欠けていたという印象を強く持ちます。

当事者意識ですか。

瀬口:そうです。米国と中国は台湾をめぐる対立の加速に歯止めをかけなければ、近い将来一触即発の状況に直面する可能性が懸念されています。米中武力衝突、中国による日本国内の米軍基地攻撃という国民の生命を脅かす最悪の事態を回避するため日本は最大限の努力を払う必要があります。

 具体的には米中の間でバランサーの役割を果たさなければなりません。それにもかかわらず、これまでの日本の動きは米国とともにリスクを拡大する方向に動いているようにみえます。

米国は、一つの中国原則に反する挑発行動

「一触即発」という緊張感は、どこから感じますか。

瀬口:米国が中国を刺激する行為を繰り返しているからです。これに対して中国は米国が想像していた以上に深刻な事態と受け止めて強く反発しており、それが米国の反中感情を一段と悪化させ、米中対立をさらにあおる悪循環に陥っています。この10月下旬だけでも3つの動きがありました。

 第1は、10月21日のジョー・バイデン大統領の発言。米メリーランド州で開かれた対話集会で、「中国が台湾を攻撃した場合、米国は台湾を防衛するか」との問に「私たちには防衛する責務がある」と回答しました。

 米国は1979年の米中国交樹立以来40年以上にわたり戦略的あいまいさを保持する姿勢を取ってきており、台湾を防衛するか否かを明らかにしませんでした。

中国には「防衛する」と思わせ、台湾軍事統一を思いとどませる。他方、台湾には「防衛しない」と思わせ、独立に向かわせないようにする、という戦略ですね。

瀬口:おっしゃる通りです。ところが、バイデン大統領が「あいまい」でなくしてしまった。ホワイトハウスの報道担当者がすぐ「従来の政策方針に変更はない」と訂正したものの、バイデン政権の根本姿勢を示す発言として中国は警戒感を高めました。

 第2は10月26日のトニー・ブリンケン米国務長官の発言です。国連加盟国に対して、国連機関の活動に台湾が参加するのを支持するよう求めました。

 そして第3は、台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統が10月27日、台湾軍を訓練するための米軍部隊が駐留していることを初めて認めたことです。

 これらはいずれも、中国から見ると「一つの中国」原則を無視する行為です。

*:中国は①「世界で中国はただ一つである」②「台湾は中国の不可分の一部である」③「中華人民共和国は中国を代表する唯一の合法政府である」と定義している

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