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中東が不安定の度を増している。トルコやサウジアラビアなど、米国の同盟国による“米国離れ”“ロシアシフト”が目立つ。米国とイランの対立は膠着状態が続く。この状況はイスラエルの関与を招きかねない。中東の今を米MGAのアナリスト、モハンマド・ダルワザ氏に聞いた。(聞き手 森 永輔)
シリアからの撤退やイラン核合意からの離脱。米国国内政治に軸を置くトランプ大統領の中東政策が混乱を招いている(写真:ロイター/アフロ)

中東におけるパワーバランスの変化をテーマに伺います。これを明らかにするため、最近起きた事象がどのような影響を及ぼすか順に伺います。過激派組織「イスラム国(IS)」、トルコ、サウジ、イランに注目します。

 最初に取り上げるのは、ISの指導者、アブバクル・バグダディ容疑者が10月26日、死亡した件です。ISの活動は今後、どのようになるでしょう。

ダルワザ:ISの司令官42人中34人が殺害されたことも重要ですね。

ISの思想まで“殺害”することはできない

 しかし、指導層の命を奪っても、ISで活動する人々が抱くイデオロギーまで“殺害”することはできません。

モハンマド・ダルワザ氏(Mohammad Darwazah)
米シンクタンク、メドレー・グローバル・アドバイザーズ(MGA)で地政学・エネルギー担当ディレクターを務める。米コロンビア大学で国際関係の修士を取得。米ニューヨーク大学で教壇に立ち、中東のエネルギー政治をテーマにした講義をしている(写真:加藤康、以下同)

 ここ数年、ISはその領域の多くを失いましたが、地下に潜って活動しています。米軍がシリアから撤退すると、その空白を突いてISが再び力を取り戻す可能性があります。

 我々は同様のことを別のテロ集団でも目にしましたよね。アルカイダです。指導者ウサマ・ビンラディンを殺害しても、そのイデオロギーは今も生き続けています。

 また、ISが短期間で勢力を急拡大させた事実を思い出してください。その理由の一端は米軍がイラクから短兵急に撤退したことにあります。同じことがシリアでも起こりかねません。もちろん当時のイラクと今のシリアとでは事情が異なる部分はあります。しかし、無法地帯であることに変わりはありません。

 ISが力を取り戻しても、その活動のありようは今までとは異なるかもしれません。その領域を失っているからです。ただし、彼らは依然として攻撃力を保持しています。