
3年ぶりにサウジアラビアを訪れた。開放政策と脱石油依存の歩みが顕著に進んでいることが見て取れた。数は少ないものの、髪の毛を隠すヒジャーブ(以下、ヒジャブ)を外して街中を歩く女性が散見された。もはや罰せられることはない。実質的なハロウィーンの仮装を政府が主催する。第2の聖地「メディナ」の周辺も観光資源とする開発が進む。
10月半ば、サウジアラビア西部に位置する商都、ジェッダに行ってきた。イスラーム(以下、イスラム)協力機構(OIC)主催のセミナーに参加するためだ。OICの本部がジェッダにある。OICはイスラム諸国の国連ともいわれる国際組織で、57の国・地域が加盟している。その多くはムスリム(イスラム教徒)人口が多数を占める国・地域だが、ムスリムが少数派のところも少なくない。また、国内に比較的多くのムスリム人口を抱えるロシアやタイなどがオブザーバーとなっている。
ムスリム国ではないが、米英仏など欧米主要国や中国もOIC代表を置いている。日本も遅ればせながら今年5月、新村出・在ジェッダ総領事をOICの初代日本政府代表に任命し、イスラム諸国との関係強化を図る姿勢を示した。
今回のOICのセミナーは、新型コロナウイルスと宗教の関係に関するもの。筆者が参加したのも、発表の内容よりは、OICの場で日本のプレゼンスを示すことのほうに意義があったような気がする(実際、中国とロシアからオンラインで参加した研究者はそれぞれウイグルやウクライナ問題を正当化するような発言をしていた)。
なお、今回のセミナーには、筆者以外にも、OICを研究する若手女性研究者が日本から参加した。筆者にとって2019年以来、久しぶりのサウジアラビア訪問であったが、彼女にとっては初めてのサウジアラビアであった。ツアーでなく、女性が1人でサウジアラビアを訪問できるようになったのも、重要な変化と言えるだろう。
観光立国へ前進
筆者がジェッダの町を訪れるのはちょうど10年ぶりで、大きく変貌していたのに驚かされた。ジェッダは、聖地マッカ(以下、メッカ)への入り口であり、旧市街に古い街並みを残していたのだが、その多くが取り壊されていたのである。
これまで、サウジアラビア以外のメディアが、多数の住民が立ち退きを強制され、暴動を起こし、警察と衝突したなどと報道していた。ソーシャルメディアでは、暴動の場面が流れていた。それゆえ、スラム街のようなところが区画整理か何かで取り壊されているのだろうと想像していたのだが、実際にはそれどころではなかった。はっきりと数値化することはできないが、印象としては旧市街の半分近く、あるいはそれ以上が取り壊され、更地やがれきの山になっていた感じである(あくまで「感じ」にすぎないが)。
一方、旧市街中心部だった辺りは、かつての面影を維持したままの改修が進んでいる。改修が完了した暁には、サウジアラビアにとって重要な観光資源となるであろうことは容易に理解できた。同国は観光産業を脱石油依存政策の柱の1つとして位置づけている。


Powered by リゾーム?