米国の原子力潜水艦「ミシガン」(写真:YONHAP NEWS/アフロ)
米国の原子力潜水艦「ミシガン」(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

 日本に原子力潜水艦は必要だろうか。9月に行われた自民党の総裁選挙でも議論が戦わされた。きっかけは、オーストラリアが9月、AUKUS(オーカス)という協力枠組みのもと、米国と英国の支援を受け原潜8隻の保有計画を進めると発表したからだ。現在の首相となった岸田文雄氏は当時、日本の原潜保有に慎重な姿勢を見せたものの、河野太郎氏、高市早苗氏は比較的積極的な発言をしている。自民党の中でも、原潜保有を推す声があるものと推測される。

 では、日本に原潜を保有するニーズがあるのだろうか。実際に導入するとなると法的な問題はないのだろうか。もし問題があったとして、解決する方法はないのだろうか。本稿はこれらを検討した上で、米国から原潜をリースすることを提案するものである。

中国原潜の抑止に必要

 まず、日本が原潜を保有した場合と保有しなかった場合で何が違うだろうか。違いは、原潜の方が通常動力の潜水艦に比べ速度が速く、より遠距離で活動できることだ。

 それが実際にどのような任務に影響を与えるだろうか。例えば、中国は今、12隻の原潜を含む69隻の潜水艦を保有しているものとみられる。この数字は2030年には21隻の原潜を含む76隻に増強されると予測されている。それらの潜水艦が、東シナ海から、日本の太平洋側、例えば東京の小笠原諸島周辺などで活動することになる。当然、日本の潜水艦は、中国の潜水艦を発見すれば追尾して、その意図などを探ることになる。しかし、原潜は速度が速く30ノットで航行できる。日本の通常動力の潜水艦は20ノットまでしか出ない。だから、振り切られてしまう。

 もちろん、日本には哨戒機、哨戒ヘリコプター、護衛艦、そして、米海軍との協力関係がある。だから、これまでは対応できた。中国の潜水艦の技術レベルが低いことも、対応できた理由だ。だが、中国は次々と新しい原潜を建造し、その技術レベルを上げている。前述のように数も増えている。今の体制のままでは、日本を守れなくなる。そこに、日本に原潜が必要な理由が存在する。

 また、日本が空母を保有するようになったことも、原潜を必要とする理由である。今、護衛艦「いずも」「かが」の2隻を改修し、F-35Bステルス戦闘機を運用する空母化計画が進んでいる。この10月、米海兵隊のF-35Bステルス戦闘機が「いずも」から実際に離着陸した。

 問題は、空母を護衛する艦艇が必要なことだ。空母はとても貴重な戦力。よって、沈められたら困る。特に敵の潜水艦が警戒対象だ。だから、航空機や水上艦で護衛する。だが、潜水艦を阻止するのは難しい作業だ。そこで、米国や英国など空母を運用する国は、原潜で空母を護衛する。

 通常動力の潜水艦では空母を護衛できないのだろうか。速度を考えると難しいことが分かる。日本の通常動力の潜水艦は前述の通り最大速度20ノット。一方、空母「いずも」「かが」の速度は30ノットである。

 しかも、昨今、海上自衛隊の活動範囲は広い。海賊対処ではソマリア沖、すなわちインド洋の西側まで行くのだ。「いずも」「かが」の行動範囲も広くなっている。毎年、どちらかの艦がインド洋まで行き、インドやスリランカと共同訓練を実施している。最近は通常動力の潜水艦も、ベトナムへの寄港など南シナ海まで活動範囲を広げている。しかし、通常動力の潜水艦にとってインド洋は遠すぎるだろう。インド洋まで行く「いずも」「かが」を護衛するのは少し苦しいところだ。

 中国海軍の原潜はすでにインド洋でも活動し、ソマリア沖で確認されたり、パキスタンに寄港したりしている。2030~40年代には、もっと多くの原潜が日本周辺からインド洋まで広く活動するだろう。中国への対応を迫られる日本が、原潜を持っていなければ対応は不十分になろう。つまり、日本には、原潜が必要なのである。

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