トランプ米大統領が10月7日にいったんシリアからの米軍撤退を決めたのを機に、「その他の同盟・友好関係に波及することはないか」と懸念する声が上がり始めた。台湾は? 韓国は? トルコは? アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)のザック・クーパー研究員に聞いた。
(聞き手 森 永輔)

ドナルド・トランプ米大統領が10月7日にいったんシリアからの米軍撤退を決め、中東は緊迫した事態に陥りました。「過激派組織『イスラム国(IS)』を相手にともに戦ったクルド人勢力を見捨てるのか」と内外から批判を浴びています。一連の動きは、トランプ政権が同盟戦略を修正したことを意味するのでしょうか。
クーパー:トランプ大統領は対シリア政策を変更しました。その点は確かです。ただし、これが同盟戦略を広く変更するシグナルであるとは考えていません。

アメリカン・エンタープライズ研究所研究員。
専門は米国の国防戦略とアジアにおける同盟関係。米プリンストン大学で安全保障論の博士号を取得。CSISでアジア安全保障担当の上級研究員や、戦略予算評価センター(CSBA)の研究員、米国家安全保障会議(NSC)スタッフなどを歴任。
その一方で、同大統領がこうした決断を下す人物であることを示すシグナルではあります。彼は、安全保障チームのアドバイスに反する決断をするのに十分な知識を自身が持っていると思っているのでしょう。
対シリア政策の変更をどう評価しますか。良い決断なのか、悪い決断なのか。
クーパー:どちらであるにせよ、その手際が悪いですね。
私が思うに、米軍はクルド人勢力と幾年にもわたり肩を並べて戦ってきました。それなのに、わずか一晩で立ち去るのは間違ったやり方です。
そして、日本にとってより重要なのは、その決断の仕方が適切でなかったことでしょう。どのように撤退すべきか、安全保障の専門家をまじえてそのプロセスを注意深く考えるべきでした。それがなされた形跡はありません。同大統領が発表し、すべての人がそれに応じて動かなければならなかった。こうしたやり方は米国の安全保障システムが想定しているものではありません。
もしトランプ大統領がシリアの米軍を撤退させたいのなら、どうするのが最善か補佐官たちにアドバイスを求め、その後に、発表すべきでした。順序が逆だったのです。
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