全4490文字

四中全会開催の遅れは習近平氏への逆風の表れ

 そこで、ものごとを進める上で、規則に定められた手続きの順守と事前の根回しが結構、重要な意味を持つ。ここで手抜きをすると、内容に入る前に反対派や非主流派に格好の口実を与え、ものごとが進まなくなる。従って、党として正式の意思決定をする前に様々な調整が行われ、会議が開かれたときにはほぼ全てのことが決まっているのが普通だ。

 今回の「四中全会」も重要な意思決定の場であり、当然、事前の根回しが必要になる。党規約では「中央委員会全体会議は、少なくとも年1回開催する」と定められている。ところが今回は前回の「三中全会」から20カ月もたってやっと開かれた。開催が遅れたのには理由があるはずだが、それを当局者が語ることはない。

 すでに指摘したとおり、党内に、ものごとを進める方向や、そのやり方に対する考え方の違いはある。別に中国共産党だけの特殊事情ではない。自分の属している組織を眺めれば、そのことはすぐに分かるだろう。政治は権力の追求であり、握った権力は手放さない。これは米ワシントンでも東京でも起こっているし、当然、北京にもある。だが北京は、ワシントンや東京に比べて権力に対する制約が小さい。われわれの政治制度である三権分立は、国家の権力を3つに分けお互いをチェックし合うことで国家権力の制約を図っているが、北京において、権力は一つでありその争奪はもっと激しいものとなる。中国共産党において政策をめぐる争いが権力の争奪と結びつくのが目立つ理由が、ここにある。

 つまり習近平氏への権力集中は、現在、党内において様々な理由により逆風が吹いていると見てよいであろう。「共産党の指導」とか「中国の特色ある社会主義」といった大きな方向性において一致しているように見えても、具体的にどう転がしていくかについて、せめぎ合いが続いていると見るべきだろう。

2022年の党大会目指し人事争いは始まっている

 最大の関心事は人事であり、2022年の次の党大会で習近平体制がどうなるかに注目が集まる。習近平氏はこれまでの人事の慣行の多くを壊してきた。従って後継者問題も全く白紙の状態だ。同氏が続投するのか、そうでないなら誰が後継者になるのか、というのは最も関心の高い話題だ。党内のせめぎ合いが、今回の人事の「噂話」となったのだろう。中国の「噂話」は、大体、そうなると都合がよいと思う側が流す。中国は2022年を目指し、すでに人事の季節に入っているのだ。

 習近平氏は、これからも権力の集中を求めていくであろう。習近平氏にとり大きな青写真を作り、それを実行できる政策と体制を整えないと2050年までに中華民族の偉大な復興は実現しないし、そのための基礎をしっかり固めないと、歴史に名をとどめることはできない。そう強く覚悟している気配がある。

 一方で、習近平氏の政策は正しくないと思っている人たちがいる。習近平氏のやり方についていけないと思っている人たちもいる。習近平氏に権力が集中すれば不利益を被ると思っている人たちもいる。これらの人たちは、あらゆる機会を捉えて習近平氏へのさらなる権力集中を阻止し、政策を変えようとし、やり方を変えさせようとするであろう。せめぎ合いは続くということだ。

 そして2022年の第20回党大会を迎える。その方向を決めるのは、もしかすると権力者のせめぎ合いではなく「民の声」かもしれない。中国では昔から「天の声」は「民の声」なのだ。