全7476文字

中国の7~9月期の実質GDP成長率は4.9%増となった。他の国々に先んじて、経済を元の成長軌道に戻している。2020年通期でも2%程度の成長を確保する見込みだ。この先には、2025年にも米国と並ぶ巨大市場となる姿が浮かぶ。日本企業にとって、中国市場で勝ち残ることがグローバル市場で勝負する前提となる。 (聞き手:森 永輔)

中国のマスク製造工場は大忙しだ(写真:AFP/アフロ)

中国市場が世界に先駆けて復調しています。

瀬口:中国政府の10月19日の発表によると、2020年7~9月期の実質GDP(国内総生産)成長率は前年同期比4.9%増でした。同年1~3月期には▲6.8%と大幅に低下したものの、4~6月期は3.2%増、7~9月期は4.9%増と着実に回復してきています。

 ただし、市場は5.0%を超える成長を見込んでいたので、予想にはわずかながら届きませんでした。その原因は、需要の回復が予想以上に早く、供給が追いつかなかったことにあります。このため在庫投資が伸び悩み、それがGDPを押し下げる要因になりました。足元で適正レベルを下回っている在庫水準については10~12月期以降に在庫投資が増加する形で復元されるため、先行きの成長率押し上げ要因になると思います。

瀬口 清之(せぐち・きよゆき)
キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹 1982年東京大学経済学部を卒業した後、日本銀行に入行。政策委員会室企画役、米国ランド研究所への派遣を経て、2006年北京事務所長に。2008年に国際局企画役に就任。2009年から現職。(写真:丸毛透)

 GDPの内訳を見てみましょう。外需(純輸出)は予想以上に好調で7~9月期の実質GDP成長率への寄与度は0.6%増でした。要因は2つあります。1つは、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が直接もたらす影響で、マスク、医療用ガウン、リモートワークやリモート教育に使われるパソコンなどの輸出が伸びたこと。マスクやガウンは、対立が激化している米国向けでも伸びています。

 もう1つは、感染拡大がもたらす間接的な影響です。世界の他の地域の生産能力が依然として回復しない中、中国の生産能力だけが先んじて回復しました。これが、他国から中国に生産を移管する動きを引き起こしたのです。欧州のある著名衣料品ブランドは、従来はインドで製造していた商品を中国で製造するように変更しました。

 この第2の要因は中国の雇用にもポジティブな影響をもたらしています。中国の衣料品業者は、この需要が来年も続くとは限らないことを理解しているので、設備の拡大ではなく、残業や一時的な雇用拡大で対応しました。これが、飲食・旅行・小売業の不振で職を失った農民工を吸収する役割を果たしたのです。

 外需は10~12月期も堅調を維持するとみられます。新型コロナ感染の第2波が欧州を襲っていますが、これがもたらす負の影響はそれほど大きくはないでしょう。欧州向け輸出は7~9月期もマイナスの伸びが続いていたためです。