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日韓の離間にすでに効果を発揮

ロシアと中国が軍事協力を強化すると、日本にはどのような影響を及ぼしますか。

小泉:尖閣有事であるとか、北方領土の有事であるとか、個別の有事に、中ロ連合軍と日本が戦うという可能性は低いと思います。

その先には米国との戦争が待っているからですね。

小泉:その通りです。むしろ、日本が留意すべきは有事に至る過程、平時からグレーゾーンでの中ロの行動でしょう。典型的な例は、7月に起きた、両国の戦略爆撃機による共同飛行です。ポイントは2つあります。1つは、これが「我々は結束している。追い詰めようとするならば痛い目に遭うぞ」という両国からのメッセージであることです。

 もう1つは、この共同飛行の後に、ロシア軍の早期警戒管制機「A50」が竹島付近で領空侵犯。これをめぐって、日韓の防衛協力の課題があらわになったことです。

A50が日韓の防空識別圏の境界を飛行したため、日韓のどちらが領空侵犯に対処するか“お見合い”状態が生じたことですね。

小泉:はい。結果的に韓国軍の戦闘機が警告射撃を実施。「日本の領土である竹島上空の領空侵犯に対し韓国軍機が警告射撃をした」ということで日本の世論は沸騰しました。

 たった1機の早期警戒管制機を飛ばしただけで日韓の世論が激し、その後、防衛協力にも悪影響を及ぼす事態に発展した。ロシアは当然、徴用工問題で日韓が対立する状況を踏まえていたと思います。

 軍事力を使ったこうした政治オペレーションが有効に機能したことは、中ロ接近がもたらす脅威が確実にあることを示したと思います。東アジアにおける米国を中心とする同盟関係が強固であることを示せればよかったのですが、逆の姿を露呈してしまいました。軍事的には愚かなことと言わざるを得ません。

日韓は一刻も早く関係を修復する必要がありますね。

小泉:そうしてほしいですね。徴用工や慰安婦の問題について、日韓は世界観のレベルで分かり合えないことが徐々に明らかになってきました。無理に分かり合う必要はないかもしれませんが、防衛協力の実務で支障が生じる状態は改めてほしいものです。

「文在寅(ムン・ジェイン)政権が続く間、関係修復は難しい」というあきらめムードの発言が自民党の政治家や有識者の口から出るようになりました。

小泉:問題は、今の韓国の主張が文在寅政権が持つ属人的な性格に由来するものなのか、韓国内により深い根を張る文脈が生み出したものなのか、です。後者なら長期戦を覚悟しなければなりません。