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中国の核戦略にロシアが技術供与

 さらに10月3日には、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、中国の早期警戒システム開発をロシアが支援していると明らかにしました。これは、両国の軍事協力のレベルが1段上がったことを意味します。早期警戒システムは核戦略を担うものだからです。

この早期警戒システムはどのようなものですか。

小泉:ロシアの報道で、ICBM(大陸間弾道ミサイル)やSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)を探知するレーダーを開発する企業が関与していることが分かっています。ロシアは「ヴォロネジ」と呼ぶ弾道ミサイル警戒レーダーを運用しています。数千km先から飛んでくる弾道ミサイルを探知できるものです。ここで培った技術を利用するものとみられます。

 米国も本土をターゲットとする核攻撃を捕捉するためのレーダー網「BMEWS(Ballistic Missile Early Warning System)」を運用しています。カナダやグリーンランドに巨大なレーダー網を設置して、北極海側から米本土に達するミサイルを警戒するものです。「ヴォロネジ」はこれに相当するシステムを構成しています。

 米国とソ連は、このようなレーダー網をお互いに設置して、相互確証破壊(MAD)*を確立しました。「ICBMを打ったらすぐ分かる。報復攻撃するぞ」ということをお互いに言える環境を作ったわけですね。

*:2つの核保有国が核兵力の均衡を保つ状態。A国がB国から核兵器に対する先制攻撃を受けても、B国の人口と経済に耐えがたい損害を確実に与えるだけの2次的な核攻撃能力を温存できる状態

 中国にはこれまで米国との間にMADを築く意図がありませんでした。「最小限の核戦力を保有していれば、米国に対して抑止力になる」と考えていたのです。米国と核戦争を戦う気はなかった。しかし「中国は最近これまでの考えを改めたのではないか」と米国の専門家が懸念し始めています。ロシアの技術を導入して核早期警戒システムを開発しているのはこの証左かもしれません。

 だとすると、米中のパワーバランスを左右する部分に、ロシアが関わることになるわけです。米中の核戦略の均衡をロシアが崩しかねない。ロシアから見ると、冷戦終結後初めて、核兵器を保有し、国連安全保障理事会の常任理事国も務めるスーパーパワーとの軍事協力ですから、協力のレベルも非常に高いものになっています。

 ロシアは国際秩序を構築できる国ではありません。国際秩序を構築できるのは、現在は米中だけです。しかしロシアは、米中のどちらにつくかで、シーソーのバランスを決めることができる。

現在進行中の、中ロ軍事協力の深化は、ロシアがシーソーの中国側に乗ったことを示しているのでしょうか。

小泉:私はそう見ています。

 今までお話しした一連の動きを素直に見れば、中ロ両国の軍事協力は相当深いレベルに達していると考えられます。