過激派組織「イスラム国」(IS)がカブール国際空港付近で起こした自爆テロでは、米軍兵士13人を含む180人以上が犠牲になり世界に大きな衝撃を与えた
過激派組織「イスラム国」(IS)がカブール国際空港付近で起こした自爆テロでは、米軍兵士13人を含む180人以上が犠牲になり世界に大きな衝撃を与えた

 アフガニスタンに関する報道は一時に比べると、大きく減少した。だが、情勢が好転したわけではない。冬が近づく中、財政の逼迫や経済の混乱など、アフガニスタンの状況はますます厳しくなっている。

 こうした危機に拍車をかけているのが治安の悪化である。諸外国は、アフガニスタンがかつてのようにアルカイダなどテロ組織の温床になることを恐れ、ターリバーン(以下、タリバン)がそれらをきちんと封じ込める、あるいは無力化することを期待している。確かにアルカイダなどもともとタリバンの傘下や協力関係にあった組織を封じ込めるのは可能かもしれない。しかし、過激派組織「イスラーム国」(以下、イスラム国。IS)のように、タリバンと敵対していたところとは、今後も戦い続けなければならないだろう。

 タリバンは、対ISという点では、対テロ戦争継続中の米国とも共闘できたはずだ。しかし、米軍がアフガニスタンを離れた今、それも期待できない。タリバンは、単独でISと戦わねばならないことになる。ISは「国」を名乗っているとはいえ、単なるテロ組織にすぎず、しかも直接対決するのはISのアフガニスタン支部「ホラーサーン州」(あるいは県、以下ホラサン州)である。現実にアフガニスタンのほぼ全土を掌握しているタリバンと比較すれば、戦力の差は歴然としている。

 *:ホラサンとはイラン東部からアフガニスタン、さらに中央アジアの一部まで含む地域の歴史的呼称。ただし、ISなどジハード主義者は、ほぼアフガニスタンと同義語として用いている

 ただし、タリバンもすでに単なる武装組織ではなく、統治を行わなければならない。ISとの戦いだけに集中できるわけではない。実際、その間隙を縫うかたちで、ISは大小多くのテロ事件をアフガニスタン国内で起こしている。とりわけ、8月26日にカーブル(以下、カブール)国際空港付近で発生した自爆テロでは米軍兵士13人を含む180人以上が犠牲になり、世界に大きな衝撃を与えた。この事件は、タリバンの攻勢の前に影を潜めているようにみえたISホラサン州が実は依然として高い戦闘能力を備えていることを明らかにした。

いまだ活発なISホラサン州

 その後もISはホラサン州名義で数多くの事件を起こしている。例えば、ISが毎週発行している戦果報告によれば、ホラサン州は8月12~18日の1週間に3件の事件を起こし、5人を殺傷している。以後、8月19~25日には件数1件・殺傷1人、8月26日~9月1日には2件・350人が記録されている。350人の死傷者とはもちろん上記のカブール国際空港での事件を含む数字である。

 そして9月1~16日には事件を起こしていなかったが、9月17~23日には18件・76人、9月24~30日には11件・36人、10月1~7日には10件・100人、10月8~12日には8件・312人、10月13~19日には6件・215人を記録している。

 この間ホラサン州は、件数ではIS支部の中で3位だが、与えた被害でみると他を圧倒している。件数は、1位がイラク州で194件、2位が西アフリカ州(ナイジェリア)で66件、ホラサン州はこれに次ぐ59件だ。被害を見ると、同州が出した死傷者は1095人。この後をイラク州の344人と、西アフリカ州の314人が追っている。

 なお、この数字はあくまでISの自己申告であり、信ぴょう性があるわけではない。実際、内外で報道されているものは多数の死者を出した事件に限られる。もっともISは、例えば治安の維持を強調するため、ISが起こした事件をタリバンが隠蔽していると主張する。

続きを読む 2/3 ISはシーア派への攻撃で存在を誇示

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