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EU(欧州連合)が二酸化炭素(CO2)の削減努力を加速している。今年5月には「グリーン・リカバリー」を打ち出した。中心に据えたのは地球温暖化対策だ。環境・経済政策について、約20年にわたってEUに助言してきた米国の文明評論家ジェレミー・リフキン氏は「化石燃料産業文明は2028年前後に崩壊する」「日本が経済の脱炭素化を含む第3次産業革命に迅速に踏み切らないと、世界の主要経済国としての地位を失う危険がある」と警告する。

欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長は「グリーン・リカバリー」を推進する意向を示す(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長が公表したグリーン・リカバリーの主眼は、CO2排出量を削減するためのプロジェクトへの投資を増やし、パンデミックによって打撃を受けた欧州各国の経済を立ち直らせることだ。具体的には、化石燃料から再生可能エネルギーへの移行や水素エネルギーの実用化、電気自動車のための充電インフラの増設、老朽化した建物のリフォームによる暖房効率の改善などが盛り込まれている。

 欧州はCO2削減に世界で最も積極的な地域だ。EUは、2050年までにCO2排出量を正味ゼロにする目標を掲げる。

 EU加盟国首脳は7月21日、グリーン・リカバリーを実行するため、約1兆8240億ユーロ(約219兆円)という第2次世界大戦後の最大の予算額について合意した。

 フォンデアライエン委員長は、グリーン・リカバリーを打ち出した理由を次のように説明する。「EUはCO2削減の筋道を全世界に先駆けて示し、迅速に行動することによって、気候保護テクノロジーのパイオニアになる。我々はこの計画によって、地球、生物学的多様性、欧州の自然、海、森林を守ることに成功すると確信している。我々は持続可能性と競争力を高め、ベンチマーク(模範)となることによって、他の国々も我々と同じ道を歩むように説得することができる」

 欧州諸国は、石炭と褐炭による火力発電所を廃止する計画を次々と打ち出している。EU加盟国の中で最もCO2排出量が多いドイツも、2038年までに全ての褐炭・石炭火力発電所を廃止することを決定した。

 筆者はEUの経済グリーン化政策の下地を作った人物に話を聞いた。その名前はジェレミー・リフキン氏(75歳)。環境問題や経済のデジタル化に関する著作が多い文明評論家である。米ワシントンDC郊外でシンクタンクTIRコンサルティング・グループを経営する。世界中の多くの企業だけでなく、政府機関も彼の助言を受けている。特に彼のリベラルな思想は欧州人の間で人気がある。

 リフキン氏は20年間にわたって、歴代3人の欧州委員長(ロマーノ・プロディ、アルフォンソ・バローゾ、ジャン・クロード・ユンケルの各氏)に対し、欧州の長期戦略についてアドバイスしてきた。ドイツのアンゲラ・メルケル首相も2005年の首相就任直後、リフキン氏を執務室に招き、成長戦略について助言を求めている。

 彼がここ数年、特に力を入れているテーマが、経済の脱炭素化だ。リフキン氏は2019年に『グローバル・グリーン・ニューディール』(原題は『THE GREEN NEW DEAL』、日本語翻訳版は2020年2月発売=NHK出版)という著作を発表し、「再生可能エネルギーによる発電コストが急激に下がっているため、化石燃料文明は遅かれ早かれ崩壊する」と予言した。興味深いことに、2019年12月にフォンデアライエン委員長が公表した脱炭素プロジェクトには「欧州グリーン・ディール」という名称が付けられている。