
ドイツ連邦議会選挙で躍進した社会民主党(SPD)は10月15日、緑の党および自由民主党(FDP)との準備協議を終えて政策合意書を公表。SPDはクリスマスまでに3党連立政権を誕生させると宣言した。
3党の首相候補と党首たちは、「我々は2週間の準備協議によって、様々な政策について合意することに成功し、ドイツを改革するための基盤をつくった」として、近く3党連立政権を樹立するための正式交渉に入ると発表した。
これに対し、前回選挙(2017年)から得票率を約9ポイント減らしたキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)は緑の党、FDPとの準備協議をまだ終えておらず、連立政権を樹立できる見込みは日一日と減っている。CDU・CSUのアルミン・ラシェット首相候補は、敗戦の責任を取って党首を辞任する意向をほのめかしている。
SPDのオラフ・ショルツ首相候補(現財務相兼副首相)は次期首相の座に向けて、大きな一歩を踏み出したと言える。

緑の党とFDPの「蜜月」?
3党が10月15日に公表した政策合意書は、準備協議の内容を記録したサマリーだ。3党が本交渉後に調印する連立契約書と違って拘束力は弱い。だがこの文書から、準備協議の中で3党が新政権を樹立するために極めて柔軟な姿勢を示し、お互いに「ウィン・ウィン」の状態をつくり出そうと努力していることが伝わってくる。
3党の路線には、隔たりもある。SPDと緑の党は中道左派政党。FDPは、企業経営者や自営業者を支持基盤とする、新自由主義政党だ。SPDと緑の党が「大きな政府」を目指すのに対し、FDPは「小さな政府」や規制緩和、企業の国際競争力維持を重視する。
FDPのクリスティアン・リントナー党首は、9月26日の連邦議会選挙の直後、緑の党と迅速に合意できるかどうか、その見通しに慎重な態度を崩さなかった。

その理由は、2017年の連邦議会選挙の後、CDU・CSUが緑の党、FDPとの連立交渉を行ったときに、緑の党とFDPが財政政策やエネルギー政策をめぐって対立し、交渉が決裂したからだ。当時リントナー氏は「政策を曲げて政権に加わるより、野党でいる方がましだ」という捨てぜりふを残して、交渉の席を立った。
だがリントナー氏は10月15日の共同記者会見で「この準備協議によって、新たな政治の方向性が生まれたような気がする。ドイツが新しい旅に出ることは可能かもしれない」と述べ、3党連立について楽観的な姿勢を示した。
SPDのショルツ首相候補は「我々はこの政権によって、過去100年間で最も大規模な産業近代化プログラムを実施する」と語った。緑の党のアンナレーナ・ベーアボック共同党首は「この合意文書を基に、我々は改革と進歩のための政権をつくる」と述べた。ドイツのあるメディアは「3党の幹部たちは、まるで新婚旅行に来たような、浮き浮きした雰囲気の中にある」と評した。

Powered by リゾーム?