日本政府が、韓国向け輸出に対する管理を厳格化すると発表してから3カ月。この措置に関する海外の反応はどうなっているのか。米中関係に詳しい、キヤノングローバル戦略研究所の瀬口清之氏が訪れた米国有識者の多くは「日本にはもう少し大局を見て判断してほしかった」と語った。その理由とは?!
(構成 森 永輔)

日本政府が、韓国向け輸出に対する管理を厳格化すると発表してから3カ月半がたちます。日本政府が取った一連の措置に対する海外の反応はどうなっているのでしょう。
9月に米ワシントン、ボストンなどを訪れ、十数人の有識者と対話する機会を得ました。政府の元高官、学者の方々です。政治的立場も共和党系、民主党系と様々でした。日本政府が取った措置について「何か別のやり方を考えてほしかった」「日本政府の気持ちは分かるが、もう少し大局を見て判断してほしかった」との意見を相次いで耳にしました。
その理由は大きく2つあります。1つは「トランプ政権と同じではないか」というもの。彼らの目に映るトランプ政権は、米国がこれまで重視してきた2つの理念、すなわち「ルールベース」と「マルチラテラリズム(多国間主義)」をおろそかにする許しがたい存在です。もう1つの理由は、中国と北朝鮮の軍事的脅威が増し、東アジアの安全保障の安定に日米韓の協力がいつにも増して重要な時期に、それを弱体化させかねない動きであることです。

キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹
1982年東京大学経済学部を卒業した後、日本銀行に入行。政策委員会室企画役、米国ランド研究所への派遣を経て、2006年北京事務所長に。2008年に国際局企画役に就任。2009年から現職。(写真:丸毛透)
トランプ政権が2つの理念をおろそかにしている点について、中国に仕掛けた貿易戦争がこの典型と言えるでしょう。
まずはルールベース。同政権は2018年7月、産業機械など中国からの輸入品340億ドル分に25%の制裁関税をかけました。中国が計上する多額の対米貿易黒字が不当である、という理由です。この9月には第4弾として、家電や衣料品1100億ドル分に15%の制裁関税を発動しています。一連の措置はWTO(世界貿易機関)が定めるルールにのっとったものとは言いがたく、中国はこれまで3度にわたって、同機関に提訴しています。
ルールベースにのっとらない行動は、米国が重視する別の理念、自由貿易体制の尊重を阻害することにもつながります。
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