全6019文字

 トランプ大統領が進める対台湾政策は、台湾の将来を大所高所から考慮したものではありません。先に挙げた米国の一連の行動は、台湾と中国の関係を悪化させます。安全保障に限らず、ビジネスの関係も社会の交流も停滞するでしょう。これは台湾の長期持続的な経済発展に深刻なダメージを与えます。台湾経済発展の大前提は中国とのビジネス拡大だからです。つまり、トランプ大統領の行動は、台湾を支援し反中姿勢を強めることで米国の国内政治を自身に有利に進めるべく、外交を利用しているのです。

 同大統領が、外交を国内政治に利用した代表的な事例の1つはTPP(環太平洋経済連携協定)からの離脱でした。日本はそれなりに国力があるので、米国抜きのTPP11を実現することでこれを乗り切りました。しかし、台湾の力は日本ほど強くありません。米国に対して「ノー」とは言えないのです。

台湾をめぐる武力衝突の議論が始まった

 トランプ大統領はなぜ、リスクを考慮せずに台湾への支援を強めるのか。台湾問題に詳しい米国の中国専門家らによると、同政権内に台湾問題の歴史的経緯や中台関係の本質を理解している専門家がほとんどいないから、とのことです。よって、台湾政策を誤れば、米中関係に修復できないほどの打撃を与えることが理解できていない。

台湾情勢を理解する専門家は、オバマ政権やその前のブッシュ政権にはいたのですか。

瀬口:いました。オバマ政権の国家安全保障会議アジア上級部長にはジェフリー・ベーダー氏やエバン・メデイロス氏という中国専門家の間でも評価の高い中国通の人物が任命されていました。

 その前のブッシュ政権時代の同ポストは日本通のマイケル・グリーン氏などでしたが、中国問題に精通したダグラス・パール氏(父ブッシュ政権時代のアジア上級部長で米国を代表する中国・台湾問題専門家)やステイプルトン・ロイ氏(元駐中国米大使)らが要所要所でアドバイスをしていたはずです。こうした人々に相当する人材が、今のトランプ政権にはいないし、第2期政権にも入らないだろうということです。

となると、トランプ大統領が選挙に勝利して第2期政権となった場合、台湾が“火薬庫”になりかねないですね。