ストックホルムで10月5日、非核化をめぐる米朝実務者協議が開かれた。協議後の両者の言い分には大きな食い違いがみられる。北朝鮮が「決裂した」と言うのに対し、米国は「良い議論ができた」と評価する。いったい、どんな話し合いがなされたのか。次回の実務者協議・首脳会談はいかなる展開が考えられるのか。新型の潜水艦発射弾道ミサイルは今後の協議に影響を与えるのか。慶應義塾大学の礒﨑敦仁・准教授に聞いた。 (聞き手 森 永輔)

スウェーデンのストックホルムで10月5日、非核化をめぐる米朝実務者協議が開かれました。協議後の両者の言い分には大きな食い違いがあります。北朝鮮が「決裂した」と言うのに対し、米国は「良い議論ができた」と評価する。米国は、北朝鮮の主張は「議論の中身を反映していない」と反論しました。いったい、どんな話し合いがなされたのでしょう。
礒﨑:まだ会談の内容が漏れ伝わってきていないので確かなことは言えません。現時点の情報で判断すると、北朝鮮は今回の協議を初めから「決裂」させる気だったと考えるのが合理的です。北朝鮮の交渉を担った金明吉(キム・ミョンギル)首席代表が談話を発表したのは、北朝鮮の大使館に戻ってから数分後のことでした。

慶應義塾大学准教授
専攻は北朝鮮政治。同大学大学院法学研究科政治学専攻博士課程を単位取得退学。ソウル大学大学院博士課程に留学後、在中国日本国大使館専門調査員、ジョージワシントン大学客員研究員、ウッドロウ・ウィルソンセンター客員研究員などを歴任。近著に『北朝鮮と観光』(毎日新聞出版)。(写真:新関雅士)
北朝鮮の政治体制を考えると、金正恩(キム・ジョンウン)委員長の許可がなければ協議に対する評価を発信することは困難です。わずか数分で金正恩委員長への報告などが済んだとは思えません。「決裂」と主張するシナリオが事前に準備されていたと考えられます。
今回の交渉を誰が担うのか注目を集める中で、結局、金明吉氏という職業外交官が出てきました。この人物に協議における意思決定をする十分な権限が持たされているとは思えません。
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