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ジャービル家の有力皇太子候補はミシュアルとアフマド・ハムード

 新首長は即位後1年以内に後継者(皇太子)を決定しなければならない。これも、憲法が規定している(第4条)。まず、首長が皇太子候補を指名し、それを国民議会が特別会合において過半数の賛成で承認するという手続きを踏む。国民議会が首長の出した候補を拒否した場合、首長は新たに3人の候補を提出し、議会はそのうちの1人に忠誠の誓いを行う。

 今のところ、皇太子候補として名前が挙がっているのは、以下の人物だ。まずジャービル家から5人。ナーセル・ムハンマド元首相と、その息子アフマド現外相。サバハ首長の息子ナーセル・サバハ前国防相。アフマド・ファハド元石油相。そして第10代首長アフマドの弟であるハムードの子、アフマドなどである。

 ただし、みなそれぞれに難点を抱える。ナーセル・ムハンマドは首相時代、議会と相当対立していた。サバハ首長の息子であり、野心もたっぷりなナーセル・サバハも疑惑で国防相を事実上解任された過去がある。アフマド・ファハドも、一部に人気があるものの、さまざまな事件で名前が挙がってきた。

 ナウワーフの弟であるミシュアル国家警備隊副長官も最有力候補として名前が挙がっている。サバハ首長が米国で治療を受けた際に同行するなど、前首長との近さがアピールされている。しかし、ナーセル・ムハンマドと同様、年齢がネックとなる。

 一方、アフマド・ハムードは内相、国防相、第一副首相などを歴任しており、マイナスポイントも少ないことから、有力候補に挙げられよう。

サーリム家は有力候補に恵まれず

 サバハ、ナウワーフとジャービル家が続くなか、次もまたジャービル家となると、サーリム家としては面白くないかもしれない。しかし、サーリム家には、めぼしい候補が見つからないのも現実である。

 数少ない候補としては、第12代首長サバハの子のムハンマドがいる。彼は米ハーバード大学で博士号(経済学)を取得したのち、クウェート大学教授や財務相、外相、副首相など要職を歴任してきた。経歴だけみれば、十分資格ありといえるが、サーリム家側からの押しもそれほど目立ったことはない。かつては、サーリム家の皮を被ったジャービル家ともいわれ、ジャービル家との関係がきわめて良好であったが、だからこそ、サーリム家からは嫌われてしまった可能性があるだろう。

 いずれにせよ、ナウワーフ新首長は世界最年長の皇太子といわれ、即位時点ですでに83歳である。どれほどの期間、首長として君臨できるかは不明だ。誰を皇太子に指名するかが当面、最も注目されるであろう。

 また、場合によっては、新たに首相が任命される可能性もある。現在の首相は、サバハ・ハーリド。サバハ家のメンバーであり、大ムバーラクの子孫ではあるが、ジャービル家・サーリム家の出身ではなく、慣例では皇太子・首長になることはない。クウェートではもともと皇太子が首相を兼務するのが一般的であったが、この習慣をサバハ前首長が破った経緯がある。