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サウジアラビアの石油施設が攻撃を受けてから半月あまり、ペルシャ湾はもちろん国連総会が開かれた米国でもさや当てが続いた。軍事衝突に発展する可能性はあるのか。米国が主導する有志連合の展望は。核合意は再交渉されるのか。ジョージ・ソロス氏腹心の戦略担当幹部が設立した調査会社メドレー・グローバル・アドバイザーズのヨハネス・ヴァンデルトゥイン氏に聞いた。(聞き手 森 永輔)

米国がイランに対して厳しい姿勢を取るのはなぜですか。2020年に予定される大統領選において得票につながるのでしょうか。

ヴァンデルトゥイン:これには2つの面があります。トランプ大統領が「強い大統領」というイメージを構築しようとしていることを考えれば、イランへの強硬姿勢はこれに合致する動きです。一方、現在の対立が何かしらの戦闘に発展するリスクも考えられます。同大統領は2016年、少なくとも(編集部注:中東の)戦争には関与しないとの政策が評価されて大統領に選ばれましたから、戦闘が始まるのは好ましくありません。

ヨハネス・ヴァンデルトゥイン。米メドレー・グローバル・アドバイザーズ(MGA)のエネルギーグループでマネジングディレクターを務める。株式アナリストとして、石油や天然ガスの市場を担当。米ジョンズ・ホプキンス大学で国際経済学などの修士を取得。クレディ・スイスなどを経て、2017年からMGA。(写真:加藤 康)

ペルシャ湾で軍事衝突が起こる可能性をどう見ますか。

ヴァンデルトゥイン:現時点において多くのリスクがあると考えます。9月14日にサウジアラビアの石油施設が攻撃されました。米国とサウジはもちろん欧州の国々も、私の知る限り、この攻撃はイランによるものと考えていますから。さらに、イランは中東地域において恥知らずな行為に及んでいます*

*:レバノンのヒズボラ、イエメンのフーシといった親イラン武装勢力を支援していることを指す

 こうした事態に対して十分な抑止力を整えることができていません。それゆえ、将来起こり得る事態に対する抑止力をトランプ政権に求める圧力が存在します。

 一方で、次の点も考慮する必要があります。トランプ大統領や政権の他のメンバーの過去の発言を見ると、同政権はイランとの戦争を望んでいないことをはっきりと示しています。

 また現在の米国において戦争は不人気です。2020年に大統領選を控えていることを考えれば、戦争は同政権が求めるものではありません。

 トランプ政権が戦争を望まないとのメッセージを送り、イランも同政権の意向を理解している。この状態は、米国から軍事的な報復を受けることなくイランがどこまで行動できるのか、明確ではない状況を生み出します。リスクとして、抑止力が整えられない場合、一線を越え、戦争の原因となるような次なる事態が起こり得るということです。

 アナリストとしての見方を言うと、戦争が最も可能性の高いイベントとは思いません。とはいえ、石油市場に従事する人々が安穏とできる状況でもありません。