ペロシ米下院議長(右)の台湾訪問をめぐって、同議長とバイデン大統領(左)は意見を異にした(写真:AP/アフロ)
ペロシ米下院議長(右)の台湾訪問をめぐって、同議長とバイデン大統領(左)は意見を異にした(写真:AP/アフロ)

米ワシントンで反中感情が高まっている。 米上院外交委員会は9月14日、台湾政策法案を賛成多数で可決した。 さらに2024年には、台湾支援に積極的な共和党政権と、 独立志向の頼清徳政権が米台で誕生しかねない。 一連の動きは、台湾有事が現実となる可能性を高める。 そうならないよう、日本は米中両国に訴えかけるべきだ。

(聞き手:森 永輔)

瀬口清之キヤノングローバル戦略研究所研究主幹(以下、瀬口氏):新型コロナウイルス感染症の拡大が落ち着いてきたので、9月5~22日に欧米数カ国を回って有識者と意見交換をしてきました。今日は、その内容をお伝えしたいと思います。

瀬口 清之(せぐち・きよゆき)
瀬口 清之(せぐち・きよゆき)
キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹 1982年東京大学経済学部を卒業した後、日本銀行に入行。政策委員会室企画役、米国ランド研究所への派遣を経て、2006年北京事務所長に。2008年に国際局企画役に就任。2009年から現職。(写真:加藤 康、以下同)

 まず米国について。強い印象を受けたのは首都ワシントンの異常さでした。今年は米国にとっても中国との国交正常化に向けた動きが始まって50年に当たります。ニクソン大統領(当時)が中国を電撃訪問したのは1972年2月21日でした。けれども、これを祝うどころか、中国関係の行事はほとんど行われていないそうです。

 日本でも中国に対する国民感情は米国と同様に悪化していますが、それでも東京では多くの50周年記念行事が実施されています。直前に訪問した米ハーバード大学でも、教授、研究者、中国人留学生が集まって中秋節の交流会を楽しく開催していました。米国内でもワシントンの反中感情は際立っています。

 他方、ペロシ米下院議長が8月2~3日に台湾を訪れたことを米議会は高く評価しました。その後、ペロシ議長にならって、2組の超党派の議員団が訪台しています。

 この動きは当面、収まりそうもありません。11月に予定される中間選挙で、下院は共和党が過半数を制するとみられています。もしそうなれば次期議長は、現在、共和党院内総務を務めているケビン・マッカーシー氏が有力。同氏は中国に対して厳しい姿勢を取ってきており、議長に就任すれば台湾を訪れる可能性が高いとみられています。そうなれば、台湾をめぐって米中関係はさらに悪化するでしょう。

 米議会の対中強硬姿勢は、法律づくりにも表れています。米上院外交委員会は9月14日、台湾政策法案を賛成多数で可決しました。この法案の条文には「台湾の民主政府を、台湾の人々の合法的な代表として扱うよう連邦政府に指示する」とあります。これは72年のニクソン大統領訪中時に発出した米中共同声明(上海コミュニケ)および79年の米中外交関係樹立に関する共同コミュニケなどを根本的に否定する内容です。

 82年の米中共同コミュニケに、米国は「中華人民共和国政府を中国の唯一の合法政府であることを承認」「『二つの中国』あるいは『一つの中国、一つの台湾』政策を推し進める意図もないことを重ねて言明する」とあります。

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