(写真:ロイター/アフロ)

 新型コロナウイルスが全世界を襲い、経済や外交だけではなく、私たち一人ひとりの生活にまで影響を及ぼしている。これが長期化すると、コロナ後の世界は果たしてどうなるのかという不安に駆られる。現時点で、それを見通せている人はいない。中国も、当然、その不確実性の真っただ中にいる。

 中国は、新型コロナウイルスの感染が武漢で発生し、急速に広がったものの、全国へのまん延は全力で阻止し、抑え込んだ。経済も確実に元に戻ってきている。初動の大きなミスを世界から批判され、大慌てで「戦狼外交」を繰り広げ、世界、とりわけ米国との関係を悪化させた。新型コロナウイルスは大流行を続け世界経済の足を引っ張っており、ひいては中国経済の回復の足かせとなっている。

新型コロナ危機、中国型ガバナンスの優劣

 武漢における初動のミスは、地方組織および指導部の能力、政治優先の考え方など、中国式ガバナンスの欠点を露呈した。同時に武漢の危機は、党中央が決断すれば整然と物事を解決する共産党の組織力、動員力など、中国式ガバナンスの優位を示した。

 米国式ガバナンスはどうかというと、混乱の極みだ。それでも米国社会が崩壊する兆しはなく安定を保っている。米国民主主義の強さと言えるであろう。米国は、昨年に行われたある国際的な調査において、パンデミックに対し最強の体制にあると評価されている。にもかかわらず、信じられないような醜態を演じている。その原因は「指導力」の欠如および専門性を重んじるべき行政の極端な「政治化」にあるようだ。ドナルド・トランプ大統領の責任は重い。

 だからといって中国の仕組みがベストというわけではない。初動ミス以外にも、国民の自発性を自動的に発揮させる仕組みになっていない点に問題がある。武漢においては伝統的に市民の助け合い精神が強かったので封鎖を成功裏に乗り切れた。だが、他の地域でも同じようにいくとは限らない。共産党は、この社会との距離感に苦労しており、上からの指令と下からの自発性とのバランスをうまく取れないでいる。国民の要望と共産党の対応がずれるとき、中国社会は緊張するだろう。

 感染症対策における中国モデルが、世界標準となることも難しい。感染症学に従えば、中国モデルは正攻法かもしれないが、それを厳格に実施できる国はほぼない。国民を、あそこまで厳格に管理することは普通は難しいのだ。いかに難しいかは、あのロシアでさえも感染のまん延を止められなかったことから分かる。管理社会としての中国が、いかに突出した異質の存在であるかを示している。

 しかし、これらは序の口である。新型コロナウイルスの感染拡大が世界を変え、中国の国際情勢認識や、ものの考え方にまで大きな影響を及ぼしかねないのだ。

続きを読む 2/3 情報封鎖は、中国をますます非常識にする

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