
「メルケル後」を決める9月26日のドイツ連邦議会選挙では、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)が得票率を大幅に減らし、社会民主党(SPD)と緑の党が躍進。SPDのオラフ・ショルツ氏(63歳)を首相とする3党連立政権が誕生する可能性が高い。
CDU・CSU大きく後退
ドイツ選挙管理委員会が9月28日未明(現地時間)に発表した開票途中経過によると、CDU・CSUの得票率は前回(2017年)比で8.8ポイント減り24.1%となった。これは同党にとって、1945年の結党以来最も低い数字だ。
これに対しSPD(社会民主党)は得票率を前回に比べて5.2ポイント増やし25.7%を記録。首位に立った。左派とネオリベラル派の内部抗争のために、過去16年間にわたり低迷していたSPDが政治の表舞台に帰ってきた。また環境保護政党「緑の党」の得票率も前回比5.9ポイント増えて14.8%になった。
政党名 | 2017年選挙 | 2021年選挙 | 変化率 |
---|---|---|---|
CDU・CSU | 32.9% | 24.1% | -8.8ポイント |
SPD | 20.5% | 25.7% | 5.2ポイント |
緑の党 | 8.9% | 14.8% | 5.9ポイント |
自由民主党(FDP) | 10.7% | 11.5% | 0.8ポイント |
ドイツのための選択肢(AfD) | 12.6% | 10.3% | -2.3ポイント |
左翼党 | 9.2% | 4.9% | -4.3ポイント |
保守党の敗因はラシェット候補の指導力の弱さ
CDU・CSU後退の原因は、メルケル政権が年初から進めてきたコロナ対策に対する市民の不満と、首相候補アルミン・ラシェット氏(CDU党首)の指導力・性格の弱さである。
ARD(ドイツ公共放送連盟)が毎月発表している世論調査によると、同党の支持率は今年1月の世論調査では35%だった。しかし今年初めに毎日100人単位でコロナによる死者が出ていたにもかかわらず、当初ワクチン接種作業が遅れたことや、政府の感染防止対策が右往左往したことで市民の批判が高まった。さらに、CDU・CSUの議員が中国製マスクを省庁に斡旋(あっせん)する見返りに、企業から多額の手数料を受け取っていたことが発覚したために、今年5月には支持率が23%に急落した。
CDU・CSUの支持率は7月には28%に回復したものの、同月発生した深刻な水害が、ラシェット候補にとって「墓穴」となった。
ノルトライン・ヴェストファーレン州の首相であるラシェット候補は、7月17日にフランク・ヴァルター・シュタインマイヤー大統領とともに、洪水で深刻な被害を受けたエルフトシュタットという町を訪れた。大統領が記者団の前で、水害の犠牲者への追悼の意を表していたときに、ラシェット候補は後ろの方で地元政治家と笑っていた。彼の笑い顔の映像はメディアを通じて瞬く間に拡散し、「不謹慎な態度だ」と強く批判された。これ以降、CDU・CSUの支持率は再びがた落ちになり、9月16日には22%まで下がった。
同氏の選挙活動も精彩を欠き、それまで支援活動を控えていたアンゲラ・メルケル首相がラシェット氏の選挙区に駆けつけて応援演説を行わなくてはならないほど、CDU・CSUの人気は地に落ちた。CDU・CSU内では「やはりバイエルン州のマルクス・ゼーダー氏を首相候補にしておけばよかった」という陰口が聞かれた。押しが強く有言実行型のゼーダー氏の人気は世論調査において、優柔不断な印象を与えるラシェット氏を常に上回っていたからだ。それにもかかわらず今年4月にCDU・CSUがラシェット氏を首相候補に選んだのは失敗だった。
CDU党員からは、ラシェット氏に対して、国政選挙で第2次世界大戦後最低の得票率を記録した責任を取って党首を辞任するよう求める声が出ている。
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