李登輝の訪日にも、ビザの相互免除が一役買った(写真:AP/アフロ)
李登輝の訪日にも、ビザの相互免除が一役買った(写真:AP/アフロ)

日本と中国は9月29日、国交正常化50年を迎える。 中国大陸を統治する中華人民共和国との国交樹立は、台湾を統治する中華民国との国交断絶でもあった。 だが、それから50年、日台関係は大きく発展した。 この発展に大きな影響を与えた出来事として(1)ビザの相互免除、(2)東日本大震災、(3)日台漁業協定がある。 これらはいかなる意義を持つのか。 歴史を知ることが、今後の日台関係を考えるよすがとなる。

 50年前の1972年9月、日本は中国大陸を統治する中華人民共和国と国交を樹立し、台湾を統治する中華民国との国交を断絶した。それから50年、日台関係は大きく発展した。双方の交流は、貿易の量であれ、人の往来数であれ、国交があった時代より断交後の方がはるかに活発になった。

 中国は台湾を国際的に孤立させることで、台湾が中国との統一に応じるしかなくなることを期待していた。しかし、それはまったく外れた。この50年間、台湾は国際政治の片隅に押し込まれながらも方向を見失わず、経済を発展させ、民主化を進め、多文化社会を志向し、存在感を高めてきた。いま台湾社会に中国と統一したいという機運はない。

 中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は台湾統一を「中国の夢」と位置づけ、台湾に対する軍事的威嚇を強めている。日本は「台湾海峡の平和と安定」を強く訴え、米国に同調し有事への備えを始めている。日中関係はかつてないほど困難な状況にある。平和友好条約を結んでいながら、弾道ミサイルが日本の排他的経済水域(EEZ)に着弾する。他方、国交がない日台関係はかつてないほど良好な状況にある。

 とはいえ、日台関係も最初からよかったわけではない。断交後の70年代、80年代は冷めた状態が続いていた。90年代に台湾が民主化し、日中関係が複雑化したことで、日台関係は転機を迎えた。そして2010年代に大きく発展し、相互の好感度が高い現在の状態に至った。

 日台関係を概観する最良の参考書は、川島真・清水麗・松田康博・楊永明が著わした『日台関係史1945-2020増補版』である。日本と中華民国との日華関係、日本と台湾との日台関係がよく整理されている。そして「72年体制」になってからも、日台双方で、政府レベルから経済界、一般社会まで含め多くのアクターの動きで日台関係が築かれてきたことが分かる。

 本稿では、断交後の50年を振り返って日台関係の発展に大きな影響を与えた出来事を3つ選びその意義を論じたい。その3つとは、(1)相互ビザ免除(日本側2005年)、(2)東日本大震災(2011年)、(3)日台漁業協定(2013年)である。

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