ドイツも、ロシア製の戦闘戦車を持っている国との間で「Ringtausch(指輪交換)」と呼ばれる取り決めを実行している。例えばドイツ国防省は今年8月23日、スロバキアにドイツ製の戦闘戦車レオパルト2A4型を15両供与するのと引き換えに、スロバキアがソ連製の旧式の装甲兵員輸送車30両をウクライナに供与すると発表した。スロバキアは、自国の軍用車両の不足を、ドイツからの戦闘戦車の供与で補うことができる。

 またドイツのランブレヒト国防大臣は9月15日、「我が国がギリシャにマルダー型装甲兵員輸送車を供与する代わりに(台数は不明)、ギリシャはソ連製の装甲兵員輸送車40両をウクライナに供与することで合意した」と発表している。

 「指輪交換」は、ドイツ政府にとって、ウクライナに欧米製の戦闘戦車や装甲兵員輸送車を送ることなく同国の戦闘能力を高める、苦肉の策だ。西側諸国が、戦闘戦車と装甲兵員輸送車の供与というテーマを、まるで腫れ物に触るかのように扱っていることは、ロシアとの敵対関係がエスカレートするのをいかに恐れているかをはっきり示している。

緑の党がレオパルト供与を要求

 しかしドイツ国内でも、ウクライナにドイツ製の戦闘戦車を送るべきだという意見が出始めている。その急先鋒(せんぽう)は、連立与党に属する緑の党と自由民主党(FDP)だ。緑の党に属するアンナレーナ・ベアボック外務大臣は、FAZが9月14日に掲載したインタビューの中で「ウクライナ軍の反攻作戦に勢いがついている今、レオパルト2型戦闘戦車をウクライナに供与する決定を我々は遅らせてはならない。ドイツによるウクライナへの武器供与は、同国市民の生命を救うことにつながるからだ」と述べ、戦闘戦車の供与を支持する姿勢を打ち出した。ベアボック外務大臣はショルツ首相に対して、他のNATO加盟国と一刻も早く協議して、欧米製の戦闘戦車をウクライナに供与するための枠組みをつくるべきだと暗に訴えているのだ。

 ドイツ連邦議会国防委員会のマリー・アグネス・シュトラック・ツィンマーマン委員長(FDP)も9月12日、「ウクライナ軍が領土の奪回を進めている現在のモメンタム(勢い)があるうちに、レオパルト2型戦闘戦車とマルダー装甲兵員輸送車を直ちに供与して、ウクライナ軍が東部と南部で展開している反攻作戦の後押しをすべきだ」と述べた。

 ゼレンスキー大統領が欧米製の戦闘戦車と装甲兵員輸送車の供与を求めるもう1つの理由は、「指輪交換」の限界だ。かつてワルシャワ条約機構に属していたポーランドやチェコなどの国々は、ソ連製・ロシア製戦闘戦車と装甲兵員輸送車を保有しているものの、数には限りがある。特に社会主義時代にソ連からワルシャワ条約機構の加盟国に送られた兵器は老朽化しており、スペアパーツや砲弾もやがて底をつく。ウクライナは長期戦を覚悟している。レオパルドなど西側の戦闘戦車を獲得できれば、将来もスペアパーツや砲弾を欧米から受け取れるという利点がある。

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