
河野太郎防衛相が日本経済新聞(8月15 日付)とのインタビューで「ファイブ・アイズ」*との連携拡大に意欲を示した。ファイブ・アイズは、米英などアングロサクソン系諸国による機密情報共有のフレームワーク。両国に加えて、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの5カ国で構成する。「日本も近づいて『シックス・アイズ』と言われるようになってもいい」
中国の影響力拡大に対処するために、米国の同盟国がより緊密な協力体制を築くのは歓迎すべき目標だ。しかし、もし日本が本当に「シックスス・アイ(6番目の目)」として見られるのを望むならば、日本の機密情報保持の文化と能力に大幅な変更を加える必要がある。
河野防衛相の甘すぎる見通し
もちろん、日米間の安全保障協力には長い歴史がある。近年、日本とファイブ・アイズの他のメンバー国との間でも、海軍艦艇の来日など安全保障協力が進んでいる。こうした動きは、中国と北朝鮮の軍事的脅威に関する共通の懸念に基づいている。河野氏は、安全保障協力と同じように、機密情報共有の分野でも、日本とファイブ・アイズのメンバーは協力を容易に拡大できるという考えを示した。「椅子を持っていってテーブルに座って『交ぜてくれ』と言うだけの話だ」
だが、河野氏の見方は楽観的にすぎる。このコメントは、日本とファイブ・アイズとの間に横たわる障害を深刻なまでに過小評価している。
ファイブ・アイズは、メンバー間の信頼が高いことを特徴とするグループだ。この信頼は、メンバーが第2次世界大戦の経験を共有する中で発展した。言語が共通であるとともに文化も似ているため、関係は密接だ。この深い信頼があるからこそ、他の同盟国との間よりも高いレベルの機密情報の共有が可能になる。未加工の情報もファイブ・アイズ内で共有される。
率直に言って、グループのメンバーが日本に対してこの高いレベルの信頼を持っていると言うにはほど遠い。具体的には、ファイブ・アイズへの日本の参加を妨げる大きな障害が3つある。
スパイ防止法の制定が欠かせない
まず、日本は敵のスパイ活動に対する防御力が弱いと見られていることだ。 残り3768文字 / 全文4767文字 「おすすめ」月額プランは初月無料 会員の方はこちら 日経ビジネス電子版有料会員なら 人気コラム、特集…すべての記事が読み放題 ウェビナー日経ビジネスLIVEにも参加し放題 バックナンバー11年分が読み放題この記事は会員登録で続きをご覧いただけます
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