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ソウルでGSOMIAの破棄求めデモ(写真=YONHAP NEWS/アフロ)

 8月22日、ついに韓国が「日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)」の終了を決定した。同協定が紆余曲折(うよきょくせつ)を経て日韓政府間で署名されたのはわずか3年前のこと。今回の韓国政府の突然の決定に、日本では多くの関係者が、韓国でも一部の賢者がそれぞれ、失望・困惑を表明した。これに関し、筆者は一貫して「ショックではあるが、決して驚かない」と答えてきた。今回は筆者がそう考える理由を書こう。

 理由は単純明快。現時点では日韓両国政府とも、国内政治上の理由から、安易な妥協が不可能な状況にあるからだ。さらに、頼みの米国政府も、東アジアの重要な同盟国である日韓両国を本気で仲介する意欲は薄い。恐らくは、仮に望んでも、仲介は不可能ではなかろうか。

沈黙を守る外交・安全保障の専門家たち

 筆者が最も懸念しているのは、韓国政府の判断ミスの有無よりも、米韓外交・安全保障問題の専門家の多くが今も沈黙を守っていることだ。

 少なくとも今の韓国では「沈黙は金」である。20世紀の韓国であれば、今回のごとき突然かつ大胆な安全保障上の重要決定は決して行わなかっただろう。筆者の知る限り、韓国にも優れた戦略思考家や外交・安全保障の専門家は少なくない。その中には、筆者の友人もいる。ところが、今回は彼らのほとんどが、GSOMIA終了が暗示する韓国安全保障上の問題点を提起せず、あえて沈黙を守っているようにすら見える。これは一体なぜなのか。

 米国の状況も似たり寄ったりだ。トランプ政権内外のアジア専門家は、日韓GSOMIAの終了が米韓両国にとって決して越えてはならない「レッドライン」であるとのメッセージを韓国政府に対し本気で伝えようとしたのか、疑問だ。もしくは、仮に試みたとしても、韓国政府の説得に失敗したのではないか。

GSOMIAを擁護すれば「親日派」のレッテル

 今回の韓国政府の決定は、過去70年間、北東アジアの安定を保ってきた日米韓の同盟・準同盟関係を揺るがす可能性を秘めている。筆者の米韓の友人たちの一部を立腹させるかもしれないが、今回は、なぜ韓国政府がGSOMIA終了を決定したのか、なぜ米韓の外交・安全保障の専門家たちの多くが沈黙を守っているのかに関する筆者の見立てをご紹介したい。

 第1に、日本から見れば、今回のGSOMIA終了に関する韓国政府の決定はオウンゴールにも近い戦略的失敗だ。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、日米韓の同盟・準同盟関係を犠牲にしてでも、また韓国の中長期的な政略的利益を犠牲にしてでも、国内の短期的な政治的利益を優先したと言わざるを得ない。この点については、日本国内にあまり異論はないだろう。問題はその判断の理由である。