ロシアは欧州に供給するガスの量を大幅に減らした( 写真:ロイター/アフロ)
ロシアは欧州に供給するガスの量を大幅に減らした( 写真:ロイター/アフロ)

ドイツへの天然ガス供給量をロシアが削減したため、独最大の電力・ガス企業が倒産の瀬戸際に追い込まれている。独政府は約2兆円の公的資金を投入して救済することを決めた。ロシアがガス供給を止めた場合、今年冬に向けて、ドイツ経済は第2次世界大戦後最も深刻な危機に直面する。

 7月22日、ドイツのオラフ・ショルツ首相は、経営難に陥った電力・ガス企業大手ユニパー(本社デュッセルドルフ)の救済策を公表した。同社は、ロシアによるガス供給量削減で経営難に陥り、政府に救済を要請していた。政府は同社の倒産を防ぐために、約150億ユーロ(約2兆1000億円)を投じる。

 約1万1200人の従業員を雇用するユニパーの2021年の売上高は、約1640億ユーロ(約23兆円)だった。ユニパーは、売上高では独最大のエネルギー企業である。

 ユニパーは、大手エネルギー企業エーオンが機構改革をした際、同社からスピンオフ(分離・独立)され、火力発電とガス販売を主軸とする電力会社として16年にスタートした。独国内で100を超える火力発電所、水力発電所を運転している他、英国、ロシア、スウェーデンなどに約90の発電所を保有している。

独最大のエネ企業を部分的に国有化

 ショルツ政権の救済プログラムは、独エネルギー企業に対するものとしては過去最大の規模だ。ユニパーは、部分的に「国有化」される。政府は第三者割当増資によりユニパーの株式の30%を買い取って資本参加するとともに、77億ユーロ(約1兆円)相当の強制転換社債を保有し、同社の自己資本を強化する。自己資本を強化するのは、信用格付け会社による大幅な格下げを防ぐためだ。

 さらに政府は、政府系金融機関のドイツ復興金融金庫(KfW)がユニパー向けに設定している緊急融資枠も現在の20億ユーロ(2800億円)から90億ユーロ(1兆2000億円)に拡大した。政府は同社の監査役会(独企業における最高の意思決定機関で、取締役会を監視する)に監査役を送り込み、経営を監視する。支援措置が実施されている期間中、ユニパーは株主への配当の支払いを禁止され、役員報酬も制限される。

 ユニパーが倒産の瀬戸際に追い込まれた背景に、ロシアへの依存度の高さがある。同社は、ドイツで最も多くロシア産ガスを買っていた。同社が昨年輸入した天然ガス3700億キロワット時(kWh)のうち、約54%がロシア産だった。同社はロシアを「信頼できるエネルギー供給国」と見なしていた。ロシアで発電事業も行うなど、同国と深く関わっていた。

 だがロシアは、ウクライナ侵攻開始後に態度を一変させた。今年6月16日から海底パイプライン「ノルドストリーム1(NS1)」を通じた天然ガスの1日の輸送量を通常の40%に減らした(7月27日以降は、通常の20%まで減っている)。

 ロシア側は削減の理由について、「パイプラインのガス圧縮装置のタービンが故障したため、カナダで修理していた。このタービンが、対ロシア経済制裁措置のためロシアに届いていない」と説明している。独政府は、「これは口実にすぎない。ロシアはドイツ経済を攻撃し、市民を不安に陥れようとしている」と主張し、ロシアがドイツへのガス供給を完全に停止するのは時間の問題と見ている。ロシアはすでにポーランド、ブルガリア、デンマークなどへのガス供給をストップしている。

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